壺齋散人の 映画探検 |
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キム・ギドク(金基徳)の2001年の映画「悪い男」は、韓国の売買春文化をテーマにした作品。韓国では売春は違法である。しかし売買春は盛んにおこなわれている。その点では日本と同じようなものだ。だが、日本では売春宿が公然と存在することはない。ところが、この映画を見ると、韓国では売春宿が公然と存在し、客は何らの不安を感じることなしに、女を買うことができる。女への需要は大きく、それに応えるだけの供給もあるようだ。この映画を見ると、売春宿は女をショーウィンドーみたいなところに座らせ、客に品定めをさせる。こういうのを飾窓方式というらしく、ハンブルグの売春街が有名だ。韓国の売春宿はハンブルグ方式を真似ているということか。 若い女がやくざに狙われて売春宿に売りはらわれる。女は書店で万引きしたところを書店員らしい男に取り押さえられ、その際に、金をとったと因縁をつけられる。どういうわけか女はその因縁を受け入れる。多額の金の支払いを求められた女は、自分の体で金を払うことを承諾する。かくして女は売春宿で客を取るようになるのだ。女がたいした抵抗もなしに、自分の体を売ることに同意する場面がどうもわかりにくい。女が金を盗んだという事実が全く触れられず、いきなり金のいざこざになるからだ。 ともあれ、こういう展開を見せられると、韓国では、若い女が金のトラブルで身を売るということが珍しいことではないらしい。女の売買はだいたいやくざがやっているようだ。この映画では、一風変わったやくざ者の男が女を売り払うのであるが、それは自分を侮辱した女への意趣晴らしということになっている。男はその女に一目惚れしたのだが、女がそれを拒絶して、人前で侮辱したので、その仕返しとして女を陥れたというふうになっている。そのように騙されて身を売る女が韓国では多いということか。 日本では、桐野夏生の小説にあるように、家出をしたりして日常からはみ出した少女が悪いやつにひっかかるというケースが多いようだ。小遣い稼ぎを目的に身を売る女も多いと思うが、なにも好き好んで売春の道に入る女はいないだろう。この映画の中の韓国人女性も、不如意なまま身を削られることになってしまう。 いずれにしても、この映画の中の若い女は、自分の意思で身を売ったということになっている。その女は、自分をはめた男と妙な関係になり、売春宿を出た後でも、その男と組んで客をとり続けるのである。一度この道に入ったら、なかなか抜け出せないということらしい。 |
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