壺齋散人の 映画探検 |
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キム・ギドクの2013年の映画「メビウス」は、性欲の逸脱によって崩壊した家族を描く。夫の浮気で頭のいかれた妻が、夫の性器を切り取ろうとしてかなわず、転じて息子の性器を切りとる。息子はまだ十五歳ほどの子どもである。あるべきものがなくなった息子は、悪ガキどもにいじめられる。そんな息子のために、父親は自分のペニスを提供して移植手術を受けさせる。父親のペニスをもらった息子は、ちょっと違和感を持つ。そこへ母親が戻ってきて、夫のペニスが息子についているのに驚く。母親に付きまとわれて息子のペニスは勃起する。その息子のペニスを母親はまたもや切り取ろうとする、というような荒唐無稽な話である。 ほとんどせりふのない、いわば無言劇である。キム・ギドクは、「春夏秋冬そして春」においても、せりふを極端に省略した演出をしていた。映像の巧みな組み合わせによって、せりふなしで事実の流れを伝えるのである。 父親は、ペニスによらないオーガズムの研究にいそしむ。その結果、ペニスがなくとも強烈なオーガズムを得ることに成功する。それを見極めたうえで、自分のペニスを息子に提供するのだ。 息子は、父親の浮気相手を強姦した罪で留置所にいれられる。三人の不良も一緒だ。その不良が娑婆に出てきて女に手を出そうとする。女は息子と力を合わせて、不良のペニスを切り取る。その不良ともみあっているうち、女が不良の背中にナイフをつきたてる。不良は強烈なオーガズムを感じる。そのオーガズムを求めて、ペニスを失った不良は女のもとに通うようになる。 家に戻ってきた母親は、夫や息子を混乱させる。彼女には自分のものである夫のペニスが息子の股座にあることが納得できない。そこでそのペニスを息子から夫に付け替えようとする。それを怪しんだ夫が、拳銃で妻を殺し、自分も自殺するのだ。 母親と父親の浮気相手を同一女優が一人二役で演じている。だが、同じ人間が演じているようには見えない。メーキャップで違う雰囲気を醸し出しているからだろう。 |
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