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黄色い大地(黄土地):陳凱歌



陳凱歌は張芸謀とともに中国映画第五世代の旗手として中国映画を国際的な水準に引き上げた作家だ。いわゆる紅衛兵世代に属し、共産党体制に対しては複雑な気持ちを抱いているとされる。1984年の作品「黄色い大地(黄土地)」は彼の処女作であり、中国映画に海外の注目を集めるきっかけとなったものだ。

テーマは中国農民の貧しい暮らしと、共産党による因習的な世界からの解放である。それ故至る所で共産党を褒める画面が出てくるが、これは時代の雰囲気を反映しているのだろう。1984年と言えば改革開放路線が始まったばかりで、自由な空気はまだそんなに広がっていなかった。共産党を批判することはまだタブーであった時代である。それにしてもこの映画は必要以上に共産党を美化している。

舞台は大長征直後の陝西省北部。黄河沿いの農村地帯だ。この土地を黄土というらしいが、その名の通り黄土色の不毛の台地が延々と広がっている。木一本生えていない不毛の土地にも農民が張り付いて貧しい暮らしをしている。そこへ延安から共産党員がやって来て、土地の民謡を収集することを名目に、農民たちの啓蒙活動に従事する。

そんな農民の一家で村でも最も貧しいといわれる家族にこの共産党員が世話になる。傍らその家の農作業を手伝ったりもする。この党員は中国の遅れた社会を批判してもっと住みよい社会の建設が必要だと言って周囲を啓蒙しようとする。その言葉に貧しい農民の娘が感化される。

やがて娘は父親に命じられて嫁入りをすることになる。まだ14歳くらいでしわくちゃになった老人の嫁になるのだ。娘は共産党員に延安に連れて行ってくれと頼むが、党員は自分の一存では決められないから、上司の許可を得たうえでまた迎えに戻ってくると言って帰ってしまう。

党員が返ってくる前に娘は嫁入りをさせられる。しかし老人の夫と暮らすのがいやで逃げてくると、黄河の向こう岸に駐屯しているという八路軍に合流しようとする。だが黄河は広くまた急な流れだ。娘の体力では船をこいで向こう岸に渡るのは困難だろう。

実際、映画は娘がおぼれ死んだことを暗示することで終わっている。党員は約束通り戻ってきたのだが、もう手遅れだったのだ。

というわけで、共産党礼賛を別にすれば、この映画は中国の古い時代の封建的な社会関係を批判することを主な目的にしているようだ。娘は14歳にもなると親の意志で自分の知らない男に嫁入りさせられる。若い男ならまだしも、老人に抱かれるのはいやだ。娘にも自分の意志で結婚相手を選ぶ権利を与えてやるべきだ。そんなメッセージが伝わってくる。

この映画はまた中国民謡らしい歌を随所で紹介している。娘も娘の弟も歌を歌う。節を引き延ばし裏声を利かせて歌うところは日本の民謡に通じるものを感じる。




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