壺齋散人の 映画探検 |
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2016年のアルゼンチン・スペイン合作映画「笑う故郷(El ciudadano ilustre ガストン・ドプラット監督)」は、アルゼンチンの小さな地方都市が舞台のアルゼンチン流人情劇というべき作品。アルゼンチンにかかわりのある映画はそれまでほとんど知られていなかったので、ヴェネツィアをはじめ世界の各地で紹介された際には大きな反響を呼んだ。日本でも東京映画祭で上映され話題になった。東京映画祭では原題の「名誉市民」がタイトルとされた。 ノーベル文学賞を受賞した高名な作家が、40年ぶりに故郷の街に錦をかざり、思いがけない事態に巻き込まれるさまを描く。この気むつかしい作家は、滅多に招待に応じないのだが、年老いたせいもあって無性に故郷が恋しくなり、一人で出かけていくのだ。彼には、名誉市民の称号が用意されていて、市民から大歓迎される。その上、昔の恋人とか親友に会い、大いに歓待されてよき思い出にふける。さらに若い女性が投宿先のホテルにやってきて、豊満な肉体で歓待される。すっかり恐れ入った作家は、次第に町の空気が変わっていくのに気づく。町の住人には彼に反感を持つものがあって、講演会に押しかけてはかれを罵倒したり、物理的な脅威感を与えたりする。あまつさえ、親友の態度が一変する。この親友は、妻が昔の恋人である作家に夢中になっているのが気にいらないばかりか、どうやら自分の娘まで作家に寝取られたことを知るに及び、作家への攻撃を仕掛けるのだ。作家はほうほうのていでヨーロッパに逃げ帰るが、故郷の街で受けた仕打ちに怒ることはない。むしろよい人生経験になったと満足するのだ。 こういう設定は、日本を含めてあり得ないことと思うのだが、アルゼンチンでは不思議ではなく、人々は、この作家の小説の中の世界同様、不可思議な現実を生きている、といったようなメッセージが伝わってくるように作られている。ちなみに主人公の作家は、さも実在の人物のように描かれているが、アルゼンチン人でノーベル文学賞を受けた作家はいないはずなので、これはあくまで創造された人物像のようである。そこまでして、こんな映画をなぜ作ったのか、それは製作者に聞かなければわからない。 アルゼンチン人というのは、激しやすい国民性だと伝わってくる。激すると何をするかわからない。しかもそこから冷静な状態に戻ることがない。激しっぱなしなのである。こういう国民性の人々とは、すくなくとも小生のようなものにとっては、非常に接しづらいものを感じる。 |
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