壺齋散人の 映画探検 |
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1983年のフィンランド映画「罪と罰(Rikos ja rangaistus)」は、アキ・カウリスマキの処女作である。ドストエフスキーの有名な小説をフィンランド風に翻案したと匂わせているが、原作との共通性はほとんどなく、まったく別の物語といってよい。食肉処理場で働く一人の男が、中年の男をその自宅で銃殺する。その現場を、ケータリングの要件でたまたま訪れてきた若い女に目撃される。男は警察の追求をなんとかかわし、外国へ逃走しようとするが、どういうわけか計画をやめて警察に出頭する、というような内容である。 主人公の殺人犯が警察に自首するところをのぞけば、原作の雰囲気を想起させるものはない。原作では、予審判事ポルフィーリーとラスコーリニコフの神経戦がハイライトになっているが、映画では、そうした緊迫感はない。また、殺人現場にいあわせた女にも、ソーニャの雰囲気はない。 また、主人公の殺人の動機は、世の中への怒りというよりは、個人的な怨恨らしい。かれが殺したのは、自分の恋人を死なせた男なのだが、それが無罪放免で自由を謳歌していることに、腹をたてて殺したということになっている。 映画は、主人公が男の家に押し入り、いきなり拳銃で男を殺す場面から始まる。そこに若い女が現われ、警察に通報する。その合間に男は逃げる。男はすぐに捜査線上にあがり、警察が尋問する。だが証拠がない。目撃者の若い女は、面通しされても知らないと言い張る。その理由は明らかではない。ともあれ警察は、男に自白をせまる。自白しか証拠がないというのは、日本の警察のやり方によく似ている。日本の警察も自白を唯一の頼りに、被疑者を死刑に追いやってきたものだ。 |
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