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アキ・カウリスマキ「パラダイスの夕暮れ」 フィンランドの下層社会に属する男女



アキ・カウリスマキの1986年の映画「パラダイスの夕暮れ」は、フィンランドの下層社会に属する男女の恋を描いた作品。フィンランドは一応北欧諸国に含められるので、社会保障が手厚いという印象があり、国民の間の格差も、そんなに激しいようには見えないのだが、この映画を見る限り、フィンランドにも格差があり、下層社会に属する人間にとっては生きづらい面もあるようだ。

ごみの収集員をしている男と、スーパーのレジをやっている女がちょっとしたきっかけで結びつく。男のけがを女が手当てしてやったことがきっかけだ。男は女を誘ってデートのまねごとをするが、不器用な性格で女を退屈させるばかり。男はまた喧嘩ばやく、それがもとで留置場に入れられたりする。留置場で知り合った男にごみ収集の仕事を紹介し、一緒に働くようになる。

女はレストランをくびになる。腹をたてた彼女は、簡易金庫を盗み出し、男のアパートに転がり込む。男は金庫を返したほうが良いと忠告、女は盗みの容疑で警察にひっぱられる。取り調べの最中、金庫がもどったとの連絡が入り、女は釈放される。

男は友人から金を借り、女を食事に誘うが、レストランでは入場を断られる。素性を怪しまれるのだ。女は運よく新しい仕事にありつき、男とは距離をとるようになる。どうもしっくりしないらしいのだ。友人夫婦と一緒に映画を見ようという約束もすっぽかす。腹をたてた男は、女を自分の部屋から追い出す。

女に去られた男は心の中に穴が開いた気分になる。そんな折に、二人組の悪党に襲われ、大けがをする。ごみのコンテナの陰に伸びているところを友人に発見され、病院に運ばれる。退院した男は、女のところを訪ねる。求婚するつもりなのだ。女はそれに応える。二人は一緒に船に乗って、エストニアのタリンを目指すのだ。エストニアは、フィンランドと言語が同じだし、なにかと兄弟国のような関係をたもっているらしい。

フィンランドのごみ収集システムがわかるようになっていて、なかなか興味深い。フィンランドでは、街角にごみ用のコンテナを配し、それを専用のトラックで操作して、コンテナのなかのごみを掻き出すようになっている。コンテナはローマの街角でも見かけたので、ヨーロッパではポピュラーな方式なのだろう。




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