壺齋散人の 映画探検 |
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アキ・カウリスマキの1999年の映画「白い花びら(Juha)」は、悪人に妻を奪われる男の悲哀を描いた作品。原題にある「ユハ」は、妻を盗まれた男の名である。盗まれたといっても、無理やりではない。盗人は巧妙な手口で妻に言いより、妻をその気にさせて大都会につれていき、そこで本性を現し、妻に客を取らせるように強要するのだ。要するに巧妙な誘拐なのだが、そんな誘拐がまかりとおるほど、フィンランドというのは治安の悪いところなのか、という疑問が沸いてくるような映画である。 中年男のユハと若い女マルヤが田舎暮らしをしている。ユハは孤児のマルヤを子供のころ引き取って育て、マルヤが成長すると自分の妻にしたのだった。マルヤは結婚生活に満足していない。夫は自分よりはるかに年上だし、田舎暮らしは変化がなくて息苦しい。そう思っている所に、いかにも女たらしという印象の中年男が現われる。中年男は、故障した車をユハに直してもらうのだが、それをきっかけにしてマルヤに言い寄る。マルヤは当初は避けていたが、そのうち中年男に興味を感じるようになる。この男なら自分をもっとましなところに連れて行ってくれるかもしれない。 数週間後、中年男が再びやってきて、ユハ夫妻と遊び歩き、ユハが酔いつぶれて寝ているところを、マルヤを車に乗せて去る。かれらは大都会のホテルに滞在して、当初は楽しい思いもするが、そのうち中年男の様子は豹変する。自分はお前を養うつもりはない。だから働けというのだ。要するに客をとれということだ。 マルヤは妊娠して子供を出産する。誰の子かはわからない。そのマルヤの行方を捜していたユハは、ついにマルヤの所在を突き止める。かれは、斧を持って中年男のアジトに押し掛け、胸に弾を撃ち込まれながらも、中年男を斧でぶち殺す。しかし、自分自身も深手を負った身で、ごみ処理場に倒れてしまう。子供とともに取り残されたマルヤは、とりあえずユハの家で暮らすことになるだろう。 白黒画面でしかもサイレント映画である。肝心なところだけ字幕で説明するだけで、あまり多くは語らない。それでも一応、筋書きは明瞭に伝わってくる。カウリスマキがなぜ、こんなふうに映画を作ったか。おそらく遊びの精神がなさしめたところだろう。 |
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