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アキ・カウリスマキ「トータル・バラライカ・ショー」 レニングラード・カウボーイズとロシア合唱団のジョイントコンサートの記録



アキ・カウリスマキの1994年の映画「トータル・バラライカ・ショー(Total Balalaika Show)」は、1993年12月23日に開催されたレニングラード・カウボーイズとロシアの退役軍人たちの大合唱団アレクサンドル・レッド・アーミー・コーラス・アンド・アンサンブルのジョイントコンサートを記録した作品。レニングラード・カウボーイズはカウリスマキの映画が因縁でできたバンドで、当時フィンランドでは大変人気があったそうだ。

ヘルシンキの野外音楽堂を舞台に、派手なパフォーマンスが繰り広げられる。レニングラード・カウボーイズのほうは前髪を長くたてたリーゼント・スタイル、アーミー・コーラスのほうはロシア風の軍服に身をつつみ、欧米のポップソングとロシア民謡を交互に演奏する。歌うだけではなく、アクロバット風のダンスやロシア風の踊りが混じる。そこが楽しい。

レニングラード・カウボーイズが中心になって歌った欧米の曲は、「ハッピー・トゲザー」「天国の扉」「ギミ・オール・ユア・ラヴィン」など、ロシアの合唱団が歌ったロシア民謡は「ヴォルガの舟歌」「ポーリュシュカ・ポーリェ」「カリンカ」「黒い瞳」、ロシア民謡にはロシア風の踊りが添えられる。

ラストナンバーは「ゾーズ・ワー・ザ・デイズ」。これは小生にとっては青春の歌でじつに素晴らしい曲だ。カウボーイズが英語で歌い、合唱団のメンバーがロシア語で歌う。また、中年のこぶとりした女性歌手が現われて、なぜかピアフの「パダムパダムパダム」を合いの手として歌った。

1993年といえば、ソ連が崩壊して、ロシア社会が大展開を迎えつつあった時期。西側との文化交流も盛んになりつつあった。そういう時期に、フィンランドのバンドとロシアの退役軍人の大合唱団が壮大なジョイントコンサートを行ったということだろう。ウクライナ戦争で引き裂かれたいまのヨーロッパでは到底ありえないことだ。


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