壺齋散人の 映画探検
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パウエル=プレスバーガー「赤い靴」 イギリス女のバレーの憧れ



マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガー共同監督の1948年の映画「赤い靴(The red shoes)」は、イギリス人女性がバレリーナとしての成功を目指す過程を描いた作品。それに、20世紀の初期にヨーロッパで活躍したロシアのバレー団を絡めてある。そのバレー団のモデルはディアギレフ一座だと思うが、この映画のなかではレールモントフ一座ということになっている。本物のディアギレフは、フランス公演中にストラヴィンスキーやラヴェルなどに作曲を依頼し、大いに成功した。この映画の中では、クラスターというイギリス人がバレー団のために作曲したということになっている。

イギリス女がバレー団のプリマドンナをつとめるというのが、この映画のミソである。イギリス女は大柄な体格と横柄な性格で知られ、バレリーナの印象からは遠い。そのイギリス女でも立派にバレリーナがつとまるということを、この映画は訴えたいらしい。また、イギリス人はクラシック音楽とは無縁だと思われがちだが、イギリス人にだって音楽的な才能をもった男はいるのだ、という訴えも伝わってくる。要するに、イギリス人の変なコンプレックスが、この映画からは伝わってくるのである。

イギリス女がバレーに適していないなどいうと、日本の女も短足を恥じずにバレーを楽しんでいるではないかと反論されそうだが、日本の女は自らの短足を意識しながらも、その短所を別の長所、たとえば子供らしい印象で補っている。イギリス女には、短所を補うような長所は見当たらないのではないか。

タイトルの「赤い靴」は、アンデルセンの童話に出てくるもので、それを履くと踊りをやめられなくなる。つまり悲劇を呼ぶ靴なのである。この映画の中のイギリス女にも悲劇が訪れるというわけである。




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