壺齋散人の 映画探検
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パウエル=プレスバーガー「ホフマン物語」 
オッフェンバックのオペラを映画化



マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーが共同監督した1952年の映画「ホフマン物語(The tales of Hofman)」は、ドイツ風の名を持つフランス人ジャック・オッフェンバックのオペラを映画化した作品。ホフマンは実在した詩人である。そのホフマンの恋の遍歴を描くというのが趣向。ホフマンは次々と恋に破れる。それにはそれなりの事情がある。

この映画では、ホフマンは三人の女性に恋をする。一人目はオランピア、二人目はジュリエッタ、三人目はアントニアである。これらの恋が破れたのは、それぞれ理由がある。オランピアは人形を人間と勘違いしたものだった。人形は人間と本物の恋はできない。ジュリエッタは娼婦だった。娼婦は男たちの共有財産であり、一人が独占するわけにはいかない。ホフマンとて同じことである。アントニアはファザーコンプレックスでしかも不治の病にかかっている。父親がホフマンを嫌うかぎりホフマンを愛するわけにはいかず、しかも病気が進行して恋どころではなくなる。

というわけで、ホフマンは失恋を重ねたうえに、新しい恋人ステラともうまくいく見込みがない。徹底的にもてない男として、ホフマンは描かれている。

オランピアとの場面では、軽快なバレーがふんだんにとりいれられ、バレー作品としての趣がある。ジュリエッタとの場面ではバレーではなくオペレッタ風の演出が過剰である。アントニアとの場面では、本格的なオペラを意識した演出になっている。全体としては、歌と踊りをちりばめたオペレッタ風の作品といってよい。イギリス人は本格的なオペラは好まず、オペレッタ風のミュージカルが盛んな国柄だ。この映画には、オペラを原作としながら、ミュージカル好きのイギリス人の趣味への配慮が感じられる。




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