壺齋散人の 映画探検
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アーティスト:モノクロのサイレント映画がオスカーをとった



フランス映画「アーティスト」を見た。今年(2012年)のアカデミー賞作品賞を受賞した映画だ。フランスの映画がハリウッドの映画をさしおいてオスカーを取るのはおそらく初めてのことだと思うが、この映画はそれに加えて、もっと珍しい特徴を持っている。モノカラーで、しかもサイレントなのだ。

いまどきモノカラーのサイレント映画だなんて、何を考えているのかね、と誰もが思うところだ。実を言うと、この映画を監督したミシェル・アザナヴィシュー(Michel Hazanavicius)も、この映画がヒットするなんて、全く思ってもいなかったというのだ。

彼は純粋に芸術史的な興味から、白黒のサイレント映画を作ろうと思い、金を出してくれる人を探していたところ、思いがけずにスポンサーを見つけることができた。トーマス・ラングマン(Thomas Langmann)だ。

アザナヴィシューもラングマンも、別に金を儲けようとは思っていなかったという。映画道楽で生きている人間として、たまにはこんなお遊びをしてみるのも洒落た心意気だ。そんな軽いつもりで映画作りをした。

ところが、である。映画は彼らの思惑を超えて大ヒットとなり、おまけにオスカーまで獲得した。これにはアザナヴィシューもラングマンもびっくり仰天したそうだ。

やはり映画の中身がよかったせいだろう。キャストも最高だった。落ち目のサイレント俳優を演じたジャン・デュジャルダン(Jean Dujardin)と、キュートなトーキー女優を演じたベレニス・ブジョー(Berenice Bejo)の組み合わせは良かったし、彼らの演技ぶりは大いに泣かせた。

端役もよかった。落ち目になった雇い主に忠誠を払う老運転手、頼りがいのない主人を命をかけて守る犬、そう、この映画には犬が渋い演技で一役かっているのだ。犬が人間に劣らぬ渋い演技ができるのも、サイレントならではのことかもしれない。

筋書きはいたって単純だ。サイレント映画時代に巡り合った一組の男女の物語。トーキーが出現すると、サイレント映画は急速に退場する。そんななかで、男の方は、トーキーに転身することができない。サイレントの大スターとしての誇りが許さないのだ。彼は時代の流れに逆らって、自分の金でサイレント映画を作り続けるが、惨憺たる成績に終わり、やがて世界大不況の波にのまれて破産する。

一方女の方は、声の魅力を買われて大スターになっていく。かつては男が女の面倒を見ていたのだが、いまでは立場が逆転して、女が男の面倒を申し出る。しかしそれがまた、男の誇りを傷つけるといった具合に・・・

とにかく、見て損はしない映画だと思う。読者諸君も暇と余裕があったら、見に行った方が良いと思いますよ。(写真は公式サイトから)





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