壺齋散人の 映画探検
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レ・ミゼラブル



アメリカ映画「レ・ミゼラブル」を見た。ロングランを記録したミュージカルを映画化したもので、原作はヴィクトル・ユーゴーだ。その原作を筆者が読んだのは、小学生の時。「ああ無情」と題された児童向けの翻訳書を図書館から借りて読んだことを覚えているが、ジャンバルジャンが心を入れ替えたにも拘わらず、警察に追われ、逃げ回るところが印象に残っている。ミュージカルの方は見たことはないが、聞くところによれば、原作をかなり忠実に再現しているということだ。そしてこの映画は、そのミュージカルの舞台をほとんどそのままスクリーンに移し替えたものだという。

この映画では、前半はジャンバルジャンとジャベールとの因縁を中心に描き、後半は成人したコゼットと青年との愛を中心に描いている。青年は反政府運動にかかわっており、コゼットへの愛と革命への蜂起との間で揺れ動いている。そして意を決して革命に身を投じる。その革命とは、1832年の6月暴動のことをさし、実際には革命といえるような代物ではなかったのだが、ユーゴーはそれを、1848年の6月動乱に重ねあわせながら、青年たちの英雄的な行為と捉えなおしているようなのだ。

パリの革命といえば、街頭のバリケードがすぐに思い浮かぶが、この映画でも、バリケードが革命のシンボルになっていた。バリケードを間に挟んで、学生たちと政府軍とが対峙する。学生たちは小勢の上に武器も不十分とあって、あえなく粉砕されてしまう。その粉砕の場面には一人の少年が登場し、学生たちと共に英雄的な死をとげる。パリの革命では、必ず少年が登場して民衆の勇気を盛りあげてきた歴史がある。ユーゴーはその歴史を踏まえて、この作品にも少年を登場させたのであろう。

圧巻は、ジャンバルジャンが傷ついた青年を担いで、ジャベールの追跡から逃れ、パリの下水道を逃げ回るシーンだ。このシーンは、筆者の記憶の中では、コゼットを連れて逃げ回るというイメージに定着していたところだったが、どちらが本当なのか、原作に当たってみなければわからない。

とにかく迫力がある。その迫力はスーパーマンを思わせるような、ジャンバルジャンの人並み外れた腕力と、またその心の海のような慈悲深さにあるといってよい。その腕力を以て、ジャンバルジャンはジャベールの追跡をかわし、その慈悲深さを以て、宿敵ジャベールさえ悔悛させてしまうのだ。

映画の最後のシーンでは、スーパーマンだったジャンバルジャンは、聖人となって天に召されていく。感動させられるシーンだった。





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