壺齋散人の 映画探検
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豪勇ロイド:ひ弱なおばあちゃん子ロイド



ハロルド・ロイドはチャップリン及びキートンと並びサイレント時代のアメリカン・コメディを代表するキャラクターだ。日本でもロイド眼鏡が流行歌の文句になったほど人気があった。チャップリンが社会の矛盾をペーソスをまじえて描き、キートンが物語性の強い映画を作ったのに対して、ロイドの映画にはあまり癖がない。無邪気な笑いを楽しんでいる風情がある。

「豪勇ロイド(Grandma's Boy)」は、日本語の題からは大げさなイメージが浮かんでくるが、原題にあるとおりおばあちゃん子の話だ。小さい頃から臆病だった子が、成人後恋人ができたが、その恋人をマッチョなライバルに奪われそうになる。そこをおばあちゃんが心配して、おじいちゃんの勇猛譚を話して聞かせ、その勇猛の陰には魔法の人形の魔力があるといって、それを孫に渡す。その人形の魔法のおかげで、おばあちゃん子はライバルを倒したばかりか、町中が苦しんでいたならず者まで退治するという話である。

そんなわけだから、チャップリンのような批判のパンチもないし、キートンのような追いつ追われつのアクションもあまりない。眼鏡をかけたひ弱なロイドが、マッチョな男を相手に痛快な戦いぶりを見せるという、非常に他愛ない造りの映画だ。

おじいちゃんもロイドが映じている。そのロイドは南軍のユニフォームを着て、北軍の部隊を相手に大活躍する。このように南軍に感情移入して南北戦争を描くと言うのは、グリフィスやキートンの映画でもあったが、そのほうが当時の観客にアピールできたのだろうか。日本の時代劇で新撰組が贔屓にされるようなものか。

映画の語り方に独特なものがある。時間の経過を表現するのに、a while later といわずに a mile later と言ったりする。一マイルの間にその分のドタバタ騒ぎがあったというわけである。

動物の使い方もユニークだ。子猫が出てきてロイドの靴を舐める。別にそれで都合が悪くなるでもないのに、ロイドは子猫を蹴飛ばす。すると子猫は大勢の仲間の子猫を呼んできて、皆でロイドの靴を舐める。どうということはないのだが、子猫たちが一心に靴をなめるところがなんとも愉快だ。

ロイドがならず者を追跡するシーンで、裸馬を盗んで乗る。その馬は農耕用に飼われていて、人を乗せた経験がないらしく、ロイドに乗られてびっくりし、左右にふらふらぶれながら走る。その様子が人間の酔っ払いを見るようで、これもまた愉快極まりない。

こんなわけでこの映画は、仕掛けの意外さで人を楽しませる、といった体裁の作品だ。



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