壺齋散人の 映画探検
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猛進ロイド(Girl Shy)



猛進ロイド(Girl Shy)は、理屈無しに笑える映画、それも腹を抱えて笑える映画である。とにかく全編これ笑いの渦にあふれている。喜劇映画でもこんなに笑いに富んだ映画もめったに無い。その笑いは、サイレント映画であるから、基本的には身体の動きから生まれてくる。その身体の動きがサーカスのように正常と異常の境界を極度に逸脱しているので、それを見せられているものは、自分自身の関節がはずされるような感じになる。

原題にあるとおり、女の子の苦手な青年の話である。この青年は若い女性の前に出ると赤面してしまうのに、心の中では若い女性を手練手管で誘惑するプレイボーイのつもりでいる。しかもその妄想を短編小説集に書き、それを出版しようとしている。そしてその題名を「恋のてほどき」と名づけたのだ。ところがこれを読んだ出版社は、「間抜けの恋」と題して出版しようとする。内容があまりにも馬鹿げているからだ。青年は侮辱された気持になる。

この青年がふとしたことから一人の若い女性と近づきになり、彼女が好きになってしまう。しかし現実生活では若い女性が苦手な青年は自分の気持を打ち明けられないでいる。一方若い女性には許婚がいるのだが、彼女はその男が好きではない。しかし自分の気に言った青年がプロポーズしてくれないので、やむなくその許婚と結婚する決意をする。

女性の許婚が実は結婚していることを知った青年は、彼女を結婚詐欺から救うべく、教会に駆けつけようとする。結婚式の時間が迫っているので青年は汽車に乗ろうとするがうまく乗れず、車を盗んで追われる身になる。盗んだ車を別の車と交換したはいいが、その車が壊れてしまう。しかたなく馬車を盗み、馬車が壊れると路面電車をカージャックし、路面電車が壊れるとパトカーを盗み、パトカーが壊れると再び馬車を盗み、馬車が壊れると馬に跨り、ついに教会にたどり着くや、花嫁を盗んで逃げ去る。その進捗振りがまさにスペクタキュラーで、観客を爆笑せしめるというわけなのである。

こういったわけでこの映画は、最低限の筋書きで、最大限の笑いのつぼを盛り込んでいる。ロイドが例の調子でサーカスじみた身体演技を見せてくれる。キートンと違って無表情ではなく、身体の動きとあわせてさまざまな表情を見せる。それがまた笑いの共感を呼ぶ。

サイレント映画だが、筆者が見たのはサウンドつきで、それが俳優の身体の動きと実によくマッチしている。また、笛を吹くシーンが随所で出てくるのだが、そのたびに笛の音が効果的にさしはさまれる。かなり心憎い演出が施されている。





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