壺齋散人の 映画探検
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ゲッタウェイ(The Getaway):サム・ペキンパー



「ゲッタウェイ(The Getaway)」は、アクション映画の巨匠サム・ペキンパーの代表作だ。アクション・スターとして一世を風靡したスティーヴ・マックィーンをフィーチャーして、思う存分暴れさせている。とにかくすごい。また面白い。一見して気分爽快になることは太鼓判を押せる。

この手の映画の常道として、話の内容はいたって単純だ。ギャングと取引して刑務所から出してもらった男が、なりゆき上そのギャングと決裂したために、ギャングは無論警察からも追われて、壮大な逃避行を試みるといったものだ。映画の題名「ゲッタウェイ(The Getaway)」は、その逃避行を一言で表した言葉だ。とにかく逃げ回るのである。

男(マックィーン)は、そんなにマッチョな感じではないが、めったやたらに強い。その強さを支えているのは銃の腕前だ。ペキンパーにはどうも、銃信仰のようなものがあるらしく、彼の作った数多くのテレビや映画のシーンのなかで、登場人物たちは銃をぶっ放してはいきがっている。この映画も例外ではない。マックィーンは、拳銃とライフルを駆使して、追っ手を蹴散らすのである。

マックィーンが刑務所から出られたのは、司法当局に顔の聞くギャングに自分の身を売り渡したからだ。売り渡しの結果彼は銀行強盗をすることになる。その強盗に自分の妻(アリ・マグロー)も巻き込む。ところが、ギャングにあてがわれた相棒たちがへまをおかしたために、思いがけない事態に追い込まれる。へまを理由にギャングに消されかかるのだ。

そこでマックィーンの反撃と逃走が始まる。その逃走に妻も加わる。この妻はマックィーンを刑務所から出す為に自分の身をギャングにゆだねたりもしたのだったが、それも愛人に会いたいがためのこと。マックィーンは、妻がギャングに抱かれたことに怒りを覚えたりもするが、結局妻を許してともに逃走を続ける。その挙句にまんまとメキシコまで逃げおおせるのだ。メキシコに入ってしまえば、そこまではアメリカの警察の手は届かない。晴れて自由の身になれるのだ。

なぜメキシコが犯罪者のアジールになれるのか、筆者にはその社会的な背景がよく見えないのだが、どうもメキシコはアメリカにとっての無法地帯として意識されているようだ。だからこそトランプがメキシコ国境に壁をつくるというのを、あまり問題と思わないのだろう。普通のアメリカ人にとっては、メキシコと仲良くする理由はひとつもないようだ。

それはともかく、マックィーンの自由への渇望はすさまじいものだ。彼が銀行強盗という大罪を自ら引き受けるのも自由のためだ。銀行強盗は、人さえ殺さなければ単純な窃盗事犯だから、そんなに騒ぐようなことでもない。しかし人を殺せばそうも言っていられなくなる。社会全体を敵に回して戦わねばならない。その社会とはマックィーンにとってとりあえずアメリカを意味するから、そのアメリカから脱出すれば敵対する社会から解放されるわけだ。

ペキンパーのこの映画のふてぶてしいところは、犯罪者に勝利させるところだ。この映画の中のマックィーンは、犯罪者というより英雄に近い扱いを受けている。英雄が女を連れて、ギャングや警察を翻弄し、最後にはまんまと逃げおおせる、というわけである。




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