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うつせみ:キム・ギドク



キム・ギドクの2004年の映画「うつせみ」は、台詞がほとんどなく、したがって無言劇を思わせるような映画である。時折台詞が入ることはあるが、それは周辺的な人物の口から、物語の進行上必要な説明として発せられるだけで、主人公の男女は一貫して言葉を発しない。それでいて、巧妙なゼスチャーが、言葉以上に雄弁に語りかけてくる。実験性の強い作品と言える。

他人の家に無断で侵入し、そこに住み着くヤドカリのような男と、夫に暴力を振るわれている女とが、二人で次々とヤドカリ生活をするさまを描いている。こういう生活をする人間が実際にいるとは考えられないが、可能性としてはありうるだろう。その可能性に現実の衣を着せたのがこの映画だ。

男はまだ20代前半の若さということになっている。かれは自分の家を持たないようで、留守が明らかな家に侵入してはそこで暮らしている。ある時、一軒の庭つきの家に侵入したところ、そこの主婦と仲良くなる。その主婦は、夫から暴力を振るわれて、顔中痣だらけなのだ。その主婦がなぜか、この男を好きになり、その男について家を出ては、ヤドカリ生活を共にする。そのうち、死体のいる部屋に侵入したことがきっかけで、殺人の容疑をかけられる。

男は警察につかまり、刑事から拷問されたり、看守から虐待されたりする。そこがこの映画の一つの見どころになっていて、それを通じて我々外国の観客は、韓国の警察制度の一端を垣間見たような気にさせられるのである。

それはともかく、男は無罪放免となり、再び女とのヤドカリ生活を始めるのだ。そんなわけで、かなり荒唐無稽な所のある映画だが、無言劇風の幻想的な雰囲気がその荒唐無稽さを和らげている。




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