壺齋散人の 映画探検
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イスラエル映画「シリアの花嫁」:ゴラン高原を超える愛



2004年の映画「シリアの花嫁」は、シリア人ではなくイスラエル人であるエラン・リクリスが作った作品だ。文字通りシリア人の結婚をテーマにしている。なぜ、イスラエル人のリクリスがシリア人の結婚を描く気になったのか。動機はよくわからない。だが、映画を見る限りでは、シリア人への侮蔑的な視線と、イスラエル人への好意的な見方が伝わってくる。その意味では、イスラエルの国益に沿ったプロパガンダ映画の要素を持っているとはいえる。

イスラエルの占領下にあるゴラン高原が舞台。そこに住んでいる女性が、シリアの内地に住んでいる男と結婚することになった。だが、ゴラン高原はシリア本国から切り離され、自由に往来することはできない。一旦国境をまたいでしまったら、二度と戻れない可能性が高い。そんな困難を乗り越えて、ゴラン高原の花嫁が、国境をまたいでシリアに嫁入りするというような内容だ。

簡単には嫁入りできない。いろいろな困難が立ちはだかっている。その困難を一つひとつ乗り越えて、希望を実現するというような筋書きになっているのだが、その描き方は、イスラエル側は協力的なのに、シリア人が愚かなために、ことがうまく運ばないというようなものだ。うまく運ばないそもそもの原因は、イスラエルによるゴラン高原の占領にあるにかかわらず、その部分には目をつぶって、イスラエルがあたかも正義の味方のように描かれているのは、笑止なことといえよう。

そんなわけで、かなりのプロパガンダ性を感じさせる映画だが、欧米諸国での反応はけっこうよかったようだ。



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