壺齋散人の 映画探検
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中国映画の歴史:名作の解説と批評


中国映画の歴史は20世紀の初頭に遡り、結構長い歴史を有しているが、世界の映画史上の注目を集めるようになったのは、いわゆる開花開放路線が定着した1980年代の半ば以降のことである。それまで中国映画は、基本的には大陸の中国人を唯一の顧客にしていたといってよい。1920年代にはアメリカ映画の影響を受けてそれなりの繁栄を謳歌し、戦後共産党の覇権確立後は、革命の正当性を訴えるプロパガンダ的な作品が多かった。

1980年代の半ばに、陳凱歌、張芸謀、田壮壮といった映画監督が現れ、世界の注目を集めると、彼らは中国映画第五世代といわれ、突発的な現象ではないことが強調された。彼らが第五世代と規定されることにともない、彼ら以前の世代が、順に第四、第三という具合に、遡って定義された。もともとそのような定義があったわけではない。

第五世代に属する映画監督たちは、 陳凱歌、張芸謀を筆頭に、いずれも文化革命を体験しており、また、国営の映画学校に学んでいる。国営の映画学校が、かれらにどのような教育を施したか、詳しいことはわからない。日本の場合には、基本的には、映画会社に就職した後で、独特のシステムに従って養成されたのであるが、中国では国営の映画学校が人材を要請したのである。そんなわけか、第五世代の監督たちは、外国つまり日本の侵略を批判する視点が強い一方、自国の政治・社会のあり方には、するどい批判意識を向けているわけではない。

たとえば、 陳凱歌の「黄色い大地」は、山西省の荒れ果てた土地の生産性を高めるために努力する共産党員を描いたものだし、張芸謀の一連の青春映画は、中国の若者たちの前向きな生き方を描いている。日本でそんな映画は、「青い山脈」を除けばほとんど見られない。一方、日本の中国侵略については、非常に厳しい批判の目を向けている。張芸謀は「赤いコーリャン」や「金陵十三釵」といった作品で、日本軍の残虐さを、これでもかという具合に描いている。そういう作品を見ると、中国人の日本に対する本音のようなものがうかがえて、あまりいい気持ちはしない。

文革については、田壮壮が「青い凧」でとりあげているが、基本的には政治的な批判意識を強くは感じさせない。

21世紀に入ると、賈樟柯や王小帥を中心とした新しい世代が現れ、第六世代と呼ばれるようになった。第六世代は、改革開放で国際化した中国を背景に、急速な経済発展によって変貌する中国の姿や、若者たちの新しい生き方を描くようになった。賈樟柯には、闇雲な発展がそれにとり残された人々を苦境に追いやるさまを冷静に見つめる視点があるが、おおむね鋭い政治性を感じることはない。

中国は多民族国家である、50を超える少数民族が存在する。そうした少数民族に焦点をあてて、中国人の多彩な生き方を描く作品も多数作られている。ここでは、そんな中国映画の歴史を飾る名作をとりあげ、解説・批評を加えたい。


中国映画「春の河、東へ流る」:抗日戦を描く

中国映画「小城之春」:国共内戦時代の中国

中国映画「カラスと雀」:国共内戦末期の中国

中国映画「芙蓉鎮」:動乱に翻弄される中国の庶民を描く

中国映画「山の郵便配達」:中国山村部の生活

中国映画「阿片戦争」:林則徐の戦い

中国映画「宋家の三姉妹」:激動の中国を生きた女たち


田壮壮「盗馬賊」:チベットの遊牧民の生活

田壮壮「青い凧」:中国現代史を描く

田壮壮「春の惑い」:欲求不満の人妻の不倫

胡同の理髪師:ハスチョロー、北京の庶民生活を描く

中国映画「唐山大地震」:地震に引き裂かれた家族

姜文「鬼が来た!(鬼子来了)」:鬼のような日本兵

王小帥「北京の自転車」:自転車を共有する少年たち

王小帥「我らが愛にゆれる時」:貞操観念のない女と甲斐性のない男

中国映画「孔雀 我が家の風景」:中国人の家族関係を描く

中国映画「トゥヤーの結婚」:モンゴル人の家族関係

中国映画「再会の食卓」:中国人の夫婦愛を描く

刁 亦男「薄氷の殺人」:刁 亦男

中国映画「ココシリ」:チベットカモシカの密猟を追う

劉浩「ようこそ、羊さま」:中国の貧しい農村の暮らし


中国映画「雲南の少女ルオマの初恋」:少数民族ハニ族の少女の恋

中国映画「白い馬の季節」:内モンゴル人の生活環境を描く

中国映画「草ぶきの学校」:1962年の中国農村部

中国映画「上海家族」:現代中国人の家族像

中国映画「こころの湯」:銭湯を舞台にした人情ドラマ

中国映画「胡同のひまわり」:中国人の家族関係

中国映画「天安門、恋人たち」:中国人学生たちの糜爛した性関係

婁燁(ロウ・イエ)の映画「二重生活」:中国式重婚

香港映画「花様年華」:既婚男女の恋愛


陳凱歌の映画

陳凱歌「黄色い大地」:中国農民の貧しい暮らしと中国共産党


陳凱歌「さらば、わが愛/覇王別姫」:京劇の世界を描く

陳凱歌「花の影」:辛亥革命前後における中国の支配層

陳凱歌「北京ヴァイオリン」:中国人の親子愛

陳凱歌「花の生涯 梅蘭芳」:伝説の京劇俳優を描

陳凱歌「空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎」:中国滞在中の空海


張芸謀の映画

張芸謀紅いコーリャン):莫言の小説を映画化


張芸謀「紅夢」:中国風バレエ映画

張芸謀活きる(活着):中国現代史を庶民の視線から描く

張芸謀「上海ルージュ」:中国のやくざ社会

張芸謀「あの子を探して:中国農村部での学校教育の現状

張芸謀「初恋のきた道」:中国人女性ひたむきな恋

張芸謀「至福のとき」:善良な人々の善意ある生き方

張芸謀「HERO」:中国流チャンバラ映画

張芸謀「サンザシの樹の下で」:若い男女の純愛物語

張芸謀「金陵十三釵」:南京大虐殺を描く

張芸謀単騎、千里を走る:日中合作映画


賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の映画

賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の映画「青の稲妻」:中国内陸部の若者たち

賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の映画「世界」:現代中国の若者たち

賈樟柯「長江哀歌」:三峡ダムの建設

賈樟柯「四川のうた」:企業城下町の盛衰

賈樟柯「罪の手ざわり」:改革開放の明暗

賈樟柯の映画「山河ノスタルジア」:中国経済発展のゆがみ

賈樟柯の映画「帰れない二人」:中国の新しいタイプの女


台湾の映画

侯孝賢「冬冬の夏休み」:台湾人の日本へのこだわり

侯孝賢「悲情城市」:終戦直後の台湾と228事件

侯孝賢「好男好女」:台湾近現代史シリーズ

珈琲時光:侯孝賢による日本映画

侯孝賢「黒衣の刺客」:中国の古代史に題材をとった武侠映画

李安「ウェディング・バンケット」:台湾人とアメリカ人のホモセクシャル

李安「いつか晴れた日に」:ジェーン・オースチンの小説を映画化

李安「グリーン・デスティニー」:女剣士のアクション映画

李安「ブロークバック・マウンテン」:男同士の同性愛

李安「ラスト・コーション」:日中戦争時代の中国

李安「ライフ・オブ・パイ」:トラとの共存生活

楊徳昌「台北ストーリー」:日本へのあこがれ

楊徳昌「ヤンヤン 夏の思い出」:一家族の日常生活

蔡明亮「楽日」

蔡明亮「西瓜」:水不足の台湾社会をそれなりに愉しむ

蔡明亮「黒い眼のオペラ」:マレーシアの貧民たち



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