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田壮壮「春の惑い」:欲求不満の人妻の不倫



田壮壮は、1993年に作った「青い凧」が毛沢東時代の中国を否定的に描いたことで権力の怒りをかい、当分の間、映画製作を禁止された。2002年の作品「春の惑い(小城之春)」は、その禁止がとけて最初に作った映画だ。テーマは欲求不満の人妻の不倫である。権力としては、不倫もあまり都合のよいテーマではないが、権力批判に比べればましだとして、見逃したようである。

1948年の映画「小城之春」のリメイクである。中国版「ボヴァリー夫人」ともいうべき筋書で、インポの夫に絶望した妻が、ほかの男を誘惑するというような内容だ。1948年といえば、国共内戦の最中で、一応国民党が政権を握っていたから、こういうブルジョワ的な退廃も問題にはならなかったのだろう。一方、田壮壮がリメイクした2002年は、改革開放路線が本格化して、中国でも表現の自由が拡大した時なので、こういう退廃的な映画も受け入れられやすかったのだと思われる。

人妻の不倫の話だから、あえて紹介するような内容はあまり見当たらない。欲求不満の女がいかに性的に積極的になるものか、そこのあたりを生物学的な視点から指摘できるといったところだろう。

原題は「小城之春」という、城とは邸という意味だろう。蘇州の金持ちの豪邸が舞台である。この豪邸はいかにも中国風で、小生はいつか見た魯迅の邸を思い浮かべた。広大な敷地に複数の建物が、中庭を囲んで立ち並んでいる。その屋敷全体を小城といったわけであろう。この屋敷は日本軍による破壊を逃れたということになっている。日本軍による侵略行為は,世紀がかわっても忘れられることはないようである。



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