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再会の食卓:中国人の夫婦愛を描く



王全安は、「トゥヤーの結婚」ではモンゴル人の夫婦愛を描いたが、この「再会の食卓」では、中国人の夫婦愛を描いている。それを見ると、日本人の夫婦愛とはかなり異なるので、小生などは戸惑ってしまったくらいだ。もっともそれは、小生のごく個人的な反応に過ぎないのもしれないが。

国共対立のあおりを受けて、大陸と台湾との間に引き裂かれた夫婦の物語である。別離から数十年後、台湾の男が上海に住んでいる女を訪ねて来る。この二人は、1949年に引き裂かれるようにして別れてから、それぞれ自分たちの人生を歩んできた。男には結婚した女性がいたが、いまでは死なれてやもめ暮らしのようである。一方女は、別の男と結婚して、何人かの子どもの他、孫までいる。子どものうちの一人は、別れた男のタネである。そういう事情の女のもとにやって来た男は、女とよりを戻し、一緒に台湾に連れて行きたいと思う。

その思いを女に打ち明けたところ、女は意外にも承諾する。今の生活がいやだというわけではない。今の夫を愛しているし、無論子どもたちも大事だ。なのに、古い男とよりを戻したいと思う。その気持ちが、小生などにはなかなかわからない。男女の仲というものは、特別な事情があるもので、数十年の時間の介在も、新しい生活条件も、愛の強さにはかなわない。古い男を思い続けてきたらしい女にとっては、この男との関係を修復できることが、なににもまして重要ということらしい。

その思いを、二人して今の夫にぶつけると、意外なことに承諾する。というよりは、古い男を見つめる妻の表情を見て、自分には何もできないと観念したようなのだ。どうせ横取りされるなら、惨めな姿をさらしたくない。相手にとられたのではなく、くれてやったのだ、と思いたい。そんな意地が、今の夫に意外な行動をとらせたようなのだ。子どもたちは大方が反対である。とくに古い男の実子は、自分を捨てた父が、今度は身勝手に母親を連れ去ることが許せない。しかしそんな子どもたちの感情より、自分自身の愛の方が女にとっては大事なのだ。そんなわけで、すっかり二人で台湾に行くつもりでいた所、思いがけない事態が起こる。

今の夫が発作を起こして倒れてしまったのだ。それは妻への熱烈な思いを、家族を前にして吐露したところ、激情のあまりにおきた発作だった。その発作は、今の夫がいかに妻を愛しているかを、劇的な形で示したのだった。その夫の心情にほだされた妻は、夫とともに残ることを選択する、というのが大方の筋書きである。

「トゥヤーの結婚」では、別の男と結婚することになった妻が、前の夫を連れて嫁入りしたものだ。それと同じように、この映画の中の妻も、今の夫を連れて台湾の男に嫁入りするというわけにはいかなかったのか。ふとそんな疑問がわいたところだ。いすれにしても、中国人の夫婦関係の独特さを思い知らされた映画である。




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