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中国映画「ココシリ」:チベットカモシカの密猟を追う



ココシリとは、チベット北部から青海省南部にわたる大高原地帯。チベットカモシカが生息している。その毛皮が高価で売れるというので密猟が激しく、百万頭もあった個体数が一時一万頭程度にまで減少した。それに危機感を抱いた現地の有志達が、パトロール部隊を編成して取り締まりにあたったが、組織的な武力を背景にした密旅者を根絶することはできず、かえって殺害されるケースがあとを断たなかった。2004年の中国映画「ココシリ(可可西里)」は、そんなパトロール部隊と密旅者たちとのせめぎあいを、ドキュメンタリータッチで描いたものだ。監督は陸川。

北京のジャーナリストが密猟の実態を取材しにチベットのある集落にやってくる。あたかもこの集落では、チベットカモシカの密猟を取り締まるための部隊が編成されるところだった。ジャーナリストはその部隊に同行して、密猟の実態を取材しようとする。なまやさしい仕事ではない。密猟者によるパトロール部隊員の殺害が相次いでいるのだ。

部隊は十名前後の編成で、三台の車に分乗して、密猟現場へと向かう。冬を控えた厳しい自然条件のなかで、密猟者の追跡がつづく。さまざまなアクシデントに見舞われながら密猟の現場を取り押さえたりもするが、密猟を取り仕切っている首謀者をとらえなければ問題の解決には至らない。そこで首謀者を見つけるまでは止めないという決意で追跡を続けるが、その首謀者と出会った時には、パトロール部隊は、隊長とジャーナリストの二人に減っていた。それにもかかわらず、隊長は首謀者を取り押さえよとする。しかし多勢に無勢。あっけなく射殺されてしまうのだ。ジャーナリストのほうは、パトロール部隊とは直接関係ないということで、見逃してもらう。

ただこれだけのことをドキュメンタリータッチで描いた作品なのだが、なかなか迫力を感じさせられる。密猟の徹底的な取り締まりは、民間のボランティアの手に余る。じっさい、やがては政府が直接乗り出し、その結果密猟は劇的に減少する。それまでの間を、民間のボランティアが埋めたというわけだが、彼らには密猟者を徹底的に取り締まる能力はなく、かえって殺害される事件が相次いだ。また、資金的にも苦しく、そのため密猟者から押収した毛皮を売って資金に充当することも行われた。そのため密猟者は、パトロール部隊を自分たちの獲物を横取りするライバルとして敵視したというふうにも伝わって来るのである。



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