壺齋散人の 映画探検
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グリーン・デスティニー:李安



李安の2000年の映画「グリーン・デスティニー(臥虎蔵龍)」は、女剣士を主人公にしたアクション映画である。よく出来てはいるが、純粋な娯楽映画なので、あまり言うことはない。外的なことでいくつか気づいたことがあるので、それを述べる。

まず、言葉。登場人物はみな中国人なのだが、なぜか英語をしゃべっている。これは吹き替えで処理されているのかと思って、よくよく発話者の口元を観察したところ、やはり英語をしゃべっているように見えた。台湾映画にかかわらず、なぜ英語でしゃべらせるのか。主な観客を、中国人ではなく、アメリカ人あたりに設定しているためか。李安は、前作の「いつか晴れた日に」では、イギリス人を登場させて、かれらに英語をしゃべらせていたが、それは理解できる。しかしこの映画では、中国人に英語をしゃべらせている。李安はもしかして中国きらいなのではないか、そんなことをふと思ってしまうところだ。

女剣士というモチーフは、同じ台湾人の侯孝賢も「黒衣の刺客」の中で描いていた。その時にも思ったのだが、台湾や中国本土に女剣士の伝統があるのだろうか。台湾人の彼らが特に好んで取り上げているところからみると、どうも日本の真似をしているのではないかと思わせられるところもある。台湾人は、日本統治時代に、「クノイチ」など女忍者には馴染んでいたはずだ。それが今になって、映画のなかでノスタルジックに現われているのではないか。もしそうだとしたら、この映画は日本の植民地主義の遠い反響だということになる。

日本のクノイチも、空を切って飛んだりするが、鳥のように自由に飛ぶことはない。ところがこの映画の中の剣士たちは、男女をとわず自由に空中を飛びまわっている。そういう空中飛翔にあこがれる文化が台湾や中国本土にはあるのだろうか。もしそうなら、それは龍信仰に根ざしたものなのか。龍は映画のタイトルにも含まれているとおり、台湾人や中国本土人が愛した生き物である。




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