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ブロークバック・マウンテン:李安



李安の2005年の映画「ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)」は、男同士の同性愛を描いた作品。李安は台湾人だが、台湾を舞台とした映画はあまり作っておらず、外国に出かけて行って作ることが多い。この映画もアメリカで作った。舞台設定からキャストまですべての面でアメリカ映画といってよい。

ワイオミング州のブロークバックという山の中で、羊の世話をすることになった二人の男が、同性愛に陥る。カウボーイではなくシェパードだというところがミソだろう。カウボーイといえばマッチョなイメージが強いから、ゲイには結びつかないかもしれない。羊飼いなら優しいイメージがあるから、ゲイにも結びつきやすいということか。

かれらはいきなり行為に及ぶ。テントのなかで男二人が寝ていたら、避けられないとでもいうように。はじめは若いほうがイニシャを取ろうとするが、年上の方が上になって掘る役にまわる。若い方はそれを自然に受け入れる。掘られるのも悪くないとばかりに。そういうシーンは、小生のような古風な老人には感情移入できない。

以来二人は恋仲となる。それぞれ女性と結婚したり、子どもを作ったりもするが、互いの思いは消えない。かえってつのるばかりである。若い方は、それぞれ独身にもどって、二人で暮らすことを望むが、年上のほうは賛同しない。かれにはゲイへの強い偏見があって、自分がゲイの生活を公然と行うことには尻込みするのだ。というのも、死んだ父親からゲイは恥知らずなことだと教育されていたからだ。父親は近隣に住んでいたゲイを惨殺し、その死体を子どもらに見せて、いましめとしたほどだったのだ。

アメリカでは、ゲイに対する偏見がそれほど強いということらしい。それを台湾人の李安が批判的に描いているわけだ。結局このゲイカップルの場合も、若い方が地元のならず者によって惨殺される。年上のほうは若い方の両親を訪ねて、死者の冥福を祈り、かつて死者が着ていた衣服を貰い受けて形見とするのである。

映画はこの二人をめぐって、さまざまなエピソードを挟み、それが物語りに厚みを加えている。たとえば、若い方がメキシコまで出かけていって、男を買う場面がある。性欲を発散させる必要があったからだ。それを知った年上が怒る。嫉妬からではなく、性病を懸念してのことらしい。だがおおよそは、山の中で二人で戯れるシーンだ。したがって低予算ですんだそうだが、アメリカ国内では非常な評判をとり、ヒットした。ベルリンで金熊賞もとった。ゲイの問題は欧米人の強い関心を呼ぶようだ。




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