壺齋散人の 映画探検 |
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1997年の中国映画「阿片戦争(原題鴉片戦争)」は、香港の中国返還を記念して作られた作品である。この年の7月に返還記念式典が催され、12月にこの映画が公開された。映画のテーマは、阿片戦争の結果香港がイギリスに領有される過程を描いている。 イギリスは、この映画の中では、ならず者国家として描かれている。そのならず者に、礼儀正しい中国人が応接しようとするが、野蛮なイギリス人には礼儀は通じない。連中は利己心をむき出しにして、中国をカモとしか考えない。しかし、野蛮人でも武力に勝れていては、中国人といえどもかなわない。武力に屈して言いなりになるほか道はないのだ。そんな諦観のようなものが伝わってくる映画である。 礼儀と正義の人を林則徐が代表している。かれは中国人の誇りなのだ。しかし、かれは野蛮なイギリス人を屈服させることができない。それに皇帝が怒って解任する。後任者として満州人が派遣されてくるが、かれは事態をさらに悪化させてイギリス人に攻撃の口実を与え、その結果清朝は大敗、香港を強奪されてしまうのである。 イギリス人の無法ぶりを象徴する出来事として英軍の司令官が中国人婦人を強姦しようとする場面がある。その婦人は「蓉児(ロンアル)」という名の舞妓で、司令官が彼女をものにしようとするのである。当初は清朝の権力に忖度して自重していたが、清朝軍を撃破して自信をつけると、やにわに女を強奪しにかかる。女ははさみで抵抗し、怒ったイギリス人が彼女を清朝の役人に罰せしむ。彼女は生きたまま水没させられるのだ。その場面がこの映画の中のもっとも印象的なところだ。 この映画が訴えたいのは、国力が弱い国は、国力の強い国によって、いいように蹂躙されてしまうという苦い現実だ。そんな眼に二度と会わないためにも、国力を充実せねばならない、そんな主張が伝わってくるような映画である。 小生はこの映画を岩波ホールで見たのだったが、林則徐の活躍ぶりに感銘をうけたのを覚えている。 |
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