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賈樟柯(ジャ・ジャンクー)「青の稲妻」:中国内陸部の若者たち



賈樟柯(ジャ・ジャンクー)は、中国映画の第六世代を代表する監督だ。1997年のデビュー作「一瞬の夢」が早くも世界的な注目を集めた。二作目の「プラットホーム」(2000年)は、日本の北野たけしオフィス北野と連携した作品で、1980年代の中国に生きる若者たちを描いた。

2002年の「青の稲妻(任逍遥)」も、オフィス北野と連携した作品で、2000年頃の山西省を舞台に若者たちの生き方を描いた作品だ。その頃の中国は、改革開放路線が成果をあげはじめ、沿岸部では大規模な経済発展の恩恵が見られるようになったが、山西省のような内陸部には、まだその恩恵は及んでいなかった。だから、そこに住む若者は、理想と現実とのギャップに幻滅させられていた。

この映画は、高校を卒業したての年齢で、働き口がなく漫然と日々を過ごしている若者たちを描く。背の高い若者ビンビンと、その親友シャオジイの二人が主人公だ。ビンビンは、母親と二人暮らし。恋人がいる。その恋人が、北京の大学にいくことになる。母親から早く身の始末をつけろと言われたビンビンは、軍隊に入って北京に行きたいと思うのだが、健康診断に引っかかって不合格になる。軍隊に入ることは、いわば最後の選択だと思うのだが、それさえもできないほどビンビンはついてないのだ。

一方、シャオジイの方は、酒造会社のキャンペーンガールに熱をあげる。その会社に雇ってもらおうと思って採用選考会場に出かけたところ、彼女を見て一目惚れするのだ。だが、彼女にはヒモがいた。そのヒモというのは、もと彼女の体育教師で、生徒に手を出したことを非難されて、彼女と一緒に追放処分を受けていた。そんなさえない男だが、シャオジイにとっては、手ごわいライバルとなる。結局ヒモは交通事故で死ぬが、そのことで、彼女との関係がよくなるというわけでもない。なにしろ仕事もなく、一人立ちできる身分ではないからだ。

こんな具合に、未来に希望を持てない若者たちのすさんだ生き方がテーマである。同じような境遇の若者たちが、このころの中国の内陸部には多数存在していたことを、思わせる映画である。




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