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オペレーション・ワルキューレ:ヒトラー暗殺計画を描く



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「オペレーション・ワルキューレ(Stauffenberg)」は、ドイツのテレビ局が2004年に制作・放映した作品だ。それがDVDになっているので、映画感覚で見ることができる。テーマはヒトラー暗殺計画だ。ヒトラー暗殺計画は、規模の大小併せて40以上もあったそうだが、これは中でも最大規模のもの。なにしろドイツ軍部が組織的にかかわっていたものだ。

ドイツ軍部といっても正規軍ではなく、予備役軍だ。そのトップ集団がヒトラーに反旗を翻して暗殺計画を立てた。その計画というのは、予備役軍の作戦であったオペレーション・ワルキューレを適用しようというもの。オペレーション・ワルキューレとは、予備役の軍事訓練に適用された名称で、軍の幹部はこれを実施することで、クーデタを成功させようとした。その計画の中心を担ったのは、予備役軍の幹部シュタウフェンベルグ大佐。劇のタイトルの原題は、彼の名前を冠している。

このクーデタ未遂事件は、1944年7月20日に起こった。その頃には、ドイツの敗戦は誰の目にも明らかになっており、ヒトラーへの反感は非常に高まっていた。その反感が予備役軍にも伝播して、ヒトラー暗殺計画に結びついたということだ。結局この暗殺・クーデタ計画は失敗し、シュタウフェンベルグ中佐以下首謀者たる予備役軍幹部は殺されてしまう。劇は、シュタウフェンベルグ大佐が暗殺計画を立て、仲間の軍人たちを説得してクーデタの計画を練り、ヒトラーの暗殺に失敗して銃殺されるまでの過程を描いている。

見どころはヒトラー暗殺の現場を追ったところだ。シュタウフェンブルグ大佐自ら、ヒトラーの主催する会議の現場に赴き、そこに爆弾を仕掛けて暗殺を企む。かれがヒトラーとじきじき会うことができたのは、ヒトラーの命令に応えるというチャンスを生かしたからだ。ヒトラーは、兵力の不測を補うために、予備役軍に師団の形成を命じていた。その命令への答えをするために、ヒトラーが主催する会議、日本で言えば御前会議のようなものに参加したわけだ。

シュタウフェンベルグ大佐が暗殺に失敗したのは、爆弾の仕掛け方に甘さがあったからだというふうに伝わって来る。かれはその爆弾を、ヒトラーたちのいるテーブルの下に仕掛け、自分は難をのがれるためにその場を立ち去ったのだが、爆弾を入れたカバンが、思いがけなく移動されてしまう。そのことでヒトラーは命拾いしたのである。そんなことをシュタウフェンベルグは知らない。ヒトラーは死んだものと思い込み、クーデタを実施しようとするが、ヒトラーは死んでいないという情報が出回り、計画は頓挫する。その挙句に大佐を始めとした首謀者たちは、その日のうちに、反乱罪のとがで銃殺されてしまうのである。

大佐がもしも、自爆する覚悟でいたら、もっと別の展開になっていたかもしれない。自爆という観念が浮かばなかったのは、やはりドイツ人の人生観からきているのだろう。自分の命にこだわったために、かえって大勢の命を失うことになった、そんなふうに伝わってきたところだ。




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