壺齋散人の 映画探検
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ジャック・フェデーの映画:作品の解説と批評


ジャック・フェデー(Jacques Feyder)は、フランス映画の黄金時代を築いた巨匠の一人であるが、フランス人ではない。ベルギーに生まれてフランスに帰化した人物で、フランス映画と称される作品は、実質的には三本しか作っていない。しかし、そのわずか三本の映画が、その後のフランス映画に決定的な影響を与えたのであった。その影響は、多くの映画評論家によって、肯定的に評価されたが、中には否定的な評価をする者もある。ヌーヴェル・ヴァーグの旗手といわれたフランソワ・トリュフォーはその最たるもので、フェデーの映画は、「心理的リアリズム」というけちな傾向のために、フランス映画をつまらなくした元凶だといった。

たしかに、フランス映画には、ルネ・クレールやジャン・ルノワールのような、祝祭的雰囲気に富んだ非リアリズム的な流れと、フェデーやジュリアン・デュヴィヴィエのようなリアリスティックな流れがある。どちらが優れているかは、一概にはいえないが、フェデーがフランスリアリズムに大きな影響を与えたということは、歴史的事実として言えそうである。

ジャック・フェデーの代表作は「女たちの都」。スペイン軍にフランドルの一都市が占領される話を描く。臆病な男たちにかわって、女たちが占領軍をもてなす。その見事なもてなしに感心して、占領軍も手荒なことをせず、無事退去するというような話だ。これはベルギーを舞台にした映画だが、フランスを舞台にしたものとしては、「ミモザ館」がある。こちらは南仏のニースを舞台に、母親が息子にそそぐ愛情を描く。また、「外人部隊」は、アルジェリアを舞台に、流れ者の兵士と酒場の女将との人間的な触れ合いを描いたものだ。この映画は、ジャック・フェデーの映画の原点というべきもので、これを見ればフェデーがいかに人間の触れ合いにこだわっていたかがわかる。

「鎧なき騎士」は、イギリスに招かれて作った映画で、ロシア革命の一エピソードをテーマにしている。イギリス側の制作者には、原作の反ソ的要素を強調してもらいたい意向があったようだが、フェデーはあえてそうした政治性を除外して、純粋な恋愛映画に仕立てた。そこにもフェデーの心意気のようなものを感じ取れる。

ここではそんなジャック・フェデーの主要品を取り上げ、鑑賞のうえ適宜解説・批評を加えたい、


ジャック・フェデー「外人部隊」 北アフリカの外人部隊を描く

ジャック・フェデー「ミモザ館」 母親の愛を描く

ジャック・フェデー「女だけの都」 スペイン軍によるフランドル都市の占領

ジャック・フェデー「鎧なき騎士」 ロシア革命の一コマ



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