壺齋散人の 映画探検 |
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ダルデンヌ兄弟の2008年の映画「ロルナの祈り(Le silence de Lorna)」は、アルバニアからベルギーにやってきた女性の、移民としての生き方を描いた作品だ。移民には出稼ぎ気分の者と、移民先の国民として迎えられることを願う者とがいるが、移民先の国民の資格をとることは非常にむつかしい。また、その資格をとったとしても、ドイツに住むトルコ人のように、ドイツ人社会から疎外されている者もいる。そうした移民問題の深刻さの一端を、この映画は考えさせてくれる。 主人公のロルナは、ベルギー国籍を所得するために、ベルギー人の若者クローディと偽装結婚する。金で買収して、結婚後は速やかに離婚するつもりだ。その後は、恋人と一緒に店を持ちたいと考えている。だがそんな彼女をブローカーが食い物にする、離婚した後、別のロシア人と偽装結婚させ、そのロシア人にベルギー国籍を獲得させてやるかわりに、多額の謝礼をとるつもりである。ロルナも生活資金をかせぐために、その計画に加担している。 まず、クローディと離婚しなければならない。クローディは麻薬の中毒者で、まったく生活能力がない。偽装結婚とはいえ、一緒に住んでいるロルナに何かと頼ろうとする。そんなクローディをロルナはわずらわしく感じるだけだったが、そのうち彼の純粋さに引かれるようになる。その挙句にセックスするようにもなるのだ。ところがクローディは突然死んでしまう。麻薬の多用が原因だ。 ロルナは妊娠しているのではないかと思うようになる。そんな彼女に、ブローカーはロシア人との結婚をせまる。ロルナはそのロシア人に妊娠を知らせ、そんな女でもよいかと聞く。ロシア人はダメだという。ビジネスの失敗を恐れたブローカーは、無理やりロルナに堕胎させようとする。ロルナは、実は妊娠しておらず、自分の妄想にすぎなかったのだが、妊娠した子のためにも逃げなければと、一人さまよい続けるのである。 こんなわけで、移民の弱い立場につけいって金儲けを企む人間が出てきたり、偽装結婚までして国籍を取得しようとする人間が出てきたり、現代社会の暗部を見せられる映画である。 |
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