壺齋散人の 映画探検
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ルイス・ブニュエル(Luis Buñuel)


ルイス・ブニュエル(Luis Buñuel)はスペイン人だが、フランスの映画作家として知られている。ダリと共同のデビュー作「アンダルシアの犬」はフランスで作ったものだし、戦後の一連の作品もフランスで作ったものが多い。そんなわけでフランス映画の、それも巨匠として遇されているわけだ。しかも、「アンダルシアの犬」における超現実的なイメージがあまりにも強烈だったために、シュルレアリズムのレッテルを、ダリとともに頂戴することとなった。

ダリはその後、超現実的な画風を深め、シュルレアリズムの絵画におけるチャンピオンになっていくわけだが、ブニュエルはかならずしも、シュルレアリズムにはこだわらなかった。彼は一時期のスランプの時期を過ぎて、戦後はメキシコで映画を作るようになったが、その時代の作品はどれもリアリスティックな作風のものだ。その時代の代表作は「忘れられた人々」だが、これはリアリスティックな作風で、しかもかなり社会的な視線を感じさせるものである。これだけを孤立させて見ると、イタリアのネオ・レアリズモを想起させる。

その後フランスに戻ってからは、「小間使いの日記」とか「昼顔」といった映画を、当時のフランス映画を代表する女優をフィーチャーしながら作った。これらの映画には、背徳的な雰囲気が感じられたのだったが、そうした要素はますます強くなっていって、晩年のルイス・ブニュエルの映画は、背徳の世界にのめりこんでいったかのような観を呈した。ブニュエルは当初、フランス人の背徳性を描いていたのだったが、それは背徳なことを本性としているフランス人にとって自然なことともいえるので、とくにそれを怪しむ動きはなかった。しかし、その後スペインを舞台にして背徳な人間たちを描くようになると、ブニュエルはフランス人の背徳性に怒っているのではなく、現代を生きるブルジョワたちの背徳性に怒っているのではないかとの推測がなされるようになった。

たしかに、「ブルジョワジーの密かな愉しみ」とか、「自由の幻想」とか、「欲望の曖昧な対象」とかいった晩年の作品群は、ブルジョワたちの糜爛したとでもいえるような背徳性をテーマにしている。そういう作品を見ると、人間という生き物はここまで堕落できるのかという感慨を、ため息まじりに抱くところだ。そのため息が自分自身に返ってくるとき、人は自分自身の背徳性に気づかされることだろう。ここではそんなルイス・ブニュエルの作品を取り上げて、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。




アンダルシアの犬(Un Cien Andalou)

忘れられた人々(Los Olvidados)
小間使いの日記(Le Journal d'une femme de chambre)
昼顔(Belle de Jour)
銀河(La Voie lactée)
哀しみのトリスターナ(Tristana)
ブルジョワジーの秘かな愉しみ(Le Charme discret de la bourgeoisie)
欲望のあいまいな対象(Cet obscur objet du désir)


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