壺齋散人の 映画探検
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美しき諍い女:ジャック・リヴェット



ジャック・リヴェットの1991年の映画「美しき諍い女(La Belle Noiseuse)」は、バルザックの小説「知られざる傑作(Le Chef-d'œuvre inconnu)」を映画化したもの。小生は高校時代に原作を読んだはずだが、詳しい内容は忘れてしまった。ただ変った画家の偏執狂的な製作振りがテーマだったように記憶する。

映画は四時間に及ぶ長編である。四時間という長さは、映画にとっては異常といってもよいが、この映画はあまり時間の長さを感じさせない。というのもこの映画は、一人の女をモデルにして画家が終生の大作を描くという内容で、ほとんどの部分が、ヌードのモデルと画家とのかかわりに当てられているのである。だから、ある種エロ映画を見るような感覚になる。エロ映画が好きな人間には、いくら長くても長いということはないだろう。小生のような老人には、いまさらエロ映画もないが、この映画の中のモデルのヌードは、肉体の美しさを感じさせるので、エロチックな興奮とは違ったものを感じることが出来る。

画家を演じたミシェル・ピコリは性格派の俳優で、色々な映画に出ている。小生が見た範囲では、ブニュエルの「ある小間使いの日記」とか、マノエル・デ・オリベイラの「家路」などが印象に残っている。やはり同じオリベイラの「夜顔」の演技もよかった。

モデルを演じたエマニュエル・ベアールは、表情が非常に豊かなのと、小柄に関らず豊満なボディが印象的だ。豊かな表情で豊満なボディを披露してくれるのだから、どんな男でものめり込まずにはいられないというわけである。

「美しき諍い女」とは、このモデルの女をいうのであろう。この女は、画家との間で親密な関係を築くことで、画家の妻や自分自身の恋人から嫉妬されるのである。つまり諍いの種になるような、世間騒がせな女ということだろう。

世間を騒がしたお詫びというのでもなかろうが、画家とモデルは、完成した絵を社会に出すでもなく、そのまま壁の中に塗りこめてしまうのである。バルザックが「知られざる傑作」と名づけたのは、そういう事情を忖度してのことだろう。




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