壺齋散人の 映画探検 |
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エリック・ロメールの1987年公開の映画「レネットとミラベル 四つの冒険(Quatre aventures de Reinette et Mirabelle)」は、二人の若い女性のささやかな体験をオムニバス風に描いた作品。映画全体を通じての筋の一貫性ではなく、それぞれが完結した複数の逸話をアトランダムに展開するという点で、一種のオムニバス映画といえるわけである。「喜劇と箴言」シリーズ最終作「恋人の友達」撮影の合間をぬって撮影されたという。 フランスの田舎のどこかで二人の若い女性が知り合う。一人はそこにある別荘に住んでいる女性レネット、もう一人は母親と一緒に避暑にきている女性ミラベル。ミラベルの自転車のパンクをレネットが修理したことがきっかけで二人は仲良くなる。レネットはミラベルを自分の家に案内し、泊っていくように勧める。ミラベルは承諾する。静寂な雰囲気が気に入ったのだ。そこで静寂とはどんなものか、レネットが説明する。いかに静寂に思えても、実は動物の声など、自然界には色々な音が存在する。唯一すべての音が地上から消えて、真に静寂になる瞬間がある。それは夜明け前のわずか一分の間に起こる。明朝日の出前におきて、その静寂を味わおう。 そういって彼女らは翌朝夜明け前におきて野原に行くのだが、たまたま自動車が通りがかって静寂を乱してしまう。そこで次の朝もう一度挑戦しようということになり、それまでの間一緒に遊ぶことにする。近所の人たちと会話したり、家畜小屋を訪ねたりだ。二人で食事を作って食べ、夜はダンスを踊る。そして二度目の挑戦で真の静寂を味わうのである。 以上が第一の逸話。これは「青い時間(L'Heure bleue)と題される。以下、「「カフェのボーイ」「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」「絵の売買」と続く。レネットは美術学校に入るためにパリに出てきてミラベルとルームシェアをする。田舎者のレネットは、カフェのボーイにからかわれる。そのボーイとのやりとりが第二の逸話である。小銭のないレネットは代金を払うことができない。そこでいったんカフェから逃げた後、翌日払いに行くといった内容である。ミラベルはそんなこと必要ないというのだが、潔癖なレネットは借金の始末をつけることにこだわるのだ。 第三の逸話は、彼女らがパリの街で物乞いや窃盗常習犯や女詐欺師とかかわるところを描く。レネットは物乞いに会うと施したくなる、一方ミラベルはスーパーでみかけた万引き犯を助けてやったりする。第四話は、レネットの描いた絵を画商に売りつける話、レネットはその絵を即金で売り、画商はその四倍の額で客に売りつけるといったような内容だ。 二人とも我の強い女性として描かれている。譲るべくは譲るが、肝心と思うことでは互いに譲らない。そこにフランス人の女性気質を感じたりする。 |
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