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ヴィットリオ・デ・シーカ「悲しみの青春」:イタリアでのユダヤ人迫害



ヴィットリオ・デ・シーカの1971年の映画「悲しみの青春(Il Giardino dei Finzi-Contini)」は、第二次大戦中における、イタリアでのユダヤ人迫害をテーマにした作品。デ・シーカは前年の1970年に、やはり戦争をテーマにした「ひまわり」を作っているので、晩年にいたって再び戦争の不条理さを考えるようになったものと見える。

舞台は北部の町フェラーラ。そこに住んでいるユダヤ人たちの運命が描かれる。この町にフィンチ・コンティーニという裕福なユダヤ人が広大な邸宅を構えている。そこに大勢の若者たちが集まってくる。それをホストするのは、この邸宅の令嬢ミコルである。このミコルに、近隣に住んでいるジョルジョという青年が恋をする。かれらは、幼馴染の間柄なのである。青年は彼女と結婚することを望むが、彼女は拒絶する。同胞同然に育ってきたので、近親婚のように思われ、拒絶感が働くというのだ。

とかくするうち、イタリアではファッショが台頭する。ファッショにユダヤ人が深刻な脅威を覚えることはなかったが、第二次対戦が勃発し、ナチスドイツと同盟関係になると、ナチスの影響で、イタリアでもユダヤ人迫害が深化していく。その挙句に、ミコルはじめフィンチ・コンティーニ一家は収容所へ入れられる。収容所でミコルはジョルジョの父親と出会い、ジョルジョが母親や妹とともにフランスへ逃れたと伝えられる、というような内容である。

ユダヤ人迫害という歴史的な事実を、一組の男女の成就しない愛を絡めながら描いている。だが、男女の愛が中途半端なこともあり、いまひとつ緊迫感が欠けているとの印象を受ける。デ・シーカ作品として優れているとは言えない。

なお、原題は「フィンチ・コンティーニ家の庭園」という意味。こちらのほうが映画の雰囲気をよくあらわしていると思う。



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