壺齋散人の 映画探検 |
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剣豪宮本武蔵を主人公にした映画にはさまざまなバージョンがあるが、ここでは1950年代に稲垣浩が三船敏郎を武蔵役にして作った三部作と、内田吐夢が1960年代に中村錦之助を武蔵役にして作った五部作シリーズを取り上げてみたい。まづ、内田吐夢のシリーズから。 内田吐夢によるシリーズは、数ある武蔵もののなかでも、もっとも見せるものといえる。吉川英二の小説をもとにして、五つの逸話をそれぞれ描いている。第一作の「宮本武蔵」は、関ヶ原の戦に敗れ敗残兵となった武蔵が、故郷の宮本村で姫路藩の役人に追及されたあげくに、沢庵和尚の導きで姫路城での幽閉生活に入るまでの過程を描く。 見どころは、中村錦之助演じる野生児武蔵と三国連太郎演じる沢庵和尚との交流だが、歴史上の実在人物であるこの二人が交わったという裏付けはない。吉川の創作だそうだ。しかし、武蔵ほどの野生児を、意のままに動かすことができるのは、沢庵のような肝のすわった人物でしかありえないと思うので、この創作には現実味がある。 中村錦之助の野生児ぶりは迫力がある。その野生児にも心のスキがあり、そのスキを沢庵に突かれてとらわれの身となり、あまつさえ杉の巨木に吊るされてしまうのだが、そこを友人の許嫁であるお通に救われる。それは沢庵が承知の上のことだったということになっている。お通が武蔵を救う気になったのは、許嫁の又八が別の女と逐電してしまったからだ。裏切られて傷心のお通は、武蔵のやさしさに魅かれて、かれに好意を抱くようになるのである。 武蔵はそのお通と人生のやり直しをしようと思うのだが、その前に心を入れ替えて文明人にならねばならぬと沢庵に言い含められて、姫路城の天主閣で修業三昧の暮らしに入るのである。映画は、修行する武蔵のすさまじい形相を映し出しながら終わる。 |
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