壺齋散人の 映画探検
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宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島:稲垣浩



1956年の映画「宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島」は、稲垣浩による戦後版宮本武蔵シリーズの第三作目である。佐々木小次郎との巌流島における決闘をテーマにしている。その佐々木小次郎を、二作目に続き鶴田浩二が演じているのだが、その鶴田が剣豪というよりは優男というイメージで、小次郎とはこんな優男だったのかと思わせられる。

ともあれ、小次郎と武蔵との決斗シーンは、映画のラストシーンで出てくるわけで、それに至る場面というのが、その決斗とはあまりたいしたつながりをもたない。武蔵が修業と称して百姓に身をかえるところを描いているのだが、その舞台というのが下総の法典。なんのことはない、小生が現在住んでいる前貝塚の隣村なのである。法典はいまでも、畑地帯に囲まれた長閑な土地柄だが、映画のなかの法典はまさしく原野といってもよい。その原野の中に武蔵は、連れの二人、小僧の城太郎と馬喰の熊五郎ととともに畑を耕すのだ。

ところがこのあたりには、野武士が跋扈していて、百姓を悩ませている。その野武士を退治するというのが、この映画のもうひとつの見どころになっている。百姓に雇われた武士が、百姓とともに野武士を退治するというのは、黒沢の名高い映画「七人の侍」を思わせるところだが、この映画の中の武蔵は、一人で七人分の役割を果たすというわけである。

二作目迄出ていた又七やお甲は出てこない。お甲は野武士に殺されたことになっている。お甲の娘朱美は出て来て、野武士の片棒を担ぐ役をするが、悪党が死ぬのは時代劇の定石とあって、あえなく死んでゆくのである。

お通は、やっとの思いで武蔵に出会え、ついに夫婦の約束をかわすまでになる。だがその直後に武蔵は小次郎と戦うべく、巌流小島に赴くのである。巌流島は島の正式の名ではない。武蔵が巌流佐々木小次郎と戦ったことにちなんだ通称である。その巌流島に小舟で降り立った武蔵は、朝日を背景にしてかまえ、小次郎に目くらましをさせることによって、きわどい戦いに勝つのである。

ともあれ、マッチョな武蔵が優男の小次郎に勝つというようなイメージ作りになっている。二人が戦うに至った理由は、あまり明らかではない。小次郎のほうがそれを望んだというふうになっている。




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