壺齋散人の 映画探検
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石井聰亙「ユメノ銀河」:夢野久作の世界



石井聰亙の1997年の映画「ユメノ銀河」は、夢野久作の小説を原作にしている。夢野久作は大正末期から昭和初期に活躍した怪奇小説作家で、幻想的な雰囲気を得意とした。この映画はそうした夢野の世界を映像として再構成したものだ。一見かなり荒唐無稽なところがあるが、それは原作の雰囲気を再現しているのだと思う。

一人の若い女の妄想がテーマだ。小嶺麗奈演じるバスガールが、相方の運転手を連続殺人犯と思い込み、一方では恋慕にもだえながらも、強い殺意を感じ、ついにはその男を死に追いやるというような筋書きだ。構成にあまり深い意図は感じさせず、よくある怪奇譚といったふうな作品だ。

相方の運転手を演じた浅野忠信は、無口で殺風景な雰囲気が不審な感じを抱かせる。一方バスガールを演じた小嶺麗奈は、「水の中の八月」に続いて石井の映画に主役で起用された。この時彼女は十七歳だったが、妊娠するなど、大人の役柄を演じさせられた。その彼女と、彼女の二人の女友達である京野ことみと黒谷友香の三人の顔があまりにも似ているので、小生などは区別がつかなかった。それで見ていて多少の混乱に陥った。

タイトルにある「ユメノ」は夢野久作をイメージしているのだろう。一方「銀河」が何をイメージしているのか、よくわからない。なお、モノクロームで作ってあるのは、原作のもつ古めかしい雰囲気を表現しようとしてか。



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