壺齋散人の 映画探検
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怪談:小林正樹



小林正樹の1965年の映画「怪談」は、小泉八雲の一連の怪談話に取材した作品。四編の話をオムニバス風に並べたものだ。四編のうち「雪女」と「耳なし芳一」は例の有名な「怪談」から、「黒髪」と「茶碗の中」は他の短編小説集から、それぞれ取り上げている。

原作をすべて読んだわけではなく、またかつて読んだ「怪談」の諸作品もあらかた忘れてしまったが、映画は原作にかなり忠実ということらしい。四編のうち、圧巻はやはり「耳なし芳一」で、三時間を超える全編のうち、これがほぼ半分を占める。中村賀津雄演じる芳一が耳をもがれる部分もそうだが、琵琶の音にあわせて壇ノ浦の戦の様子が再現されるところなどは、なかなか見ごたえがある。

「雪女」を岸恵子が演じているが、これもなかなかよい。仲代達也演じる亭主が、かつての約束を破って自分の本性を語ったことに怒るところなどは、怪しい雰囲気がただよって、寒々しい気分にさせられる。

「黒髪」は、秋成の「浅茅が宿」を翻案したものだろう。死んだ妻とむつみあうという、同じような趣旨の映画に新藤兼人の「藪の中の黒猫」があるが、この「黒髪」も、三国廉太郎演じる男と、新珠美千代演じる妻との、はかない夫婦愛がよく描かれており、怪談というよりは、悲恋物語というべきかもしれない。

「茶碗の中」は、文字通り茶碗の中から現れた幽霊に取りつかれるという奇妙な話である。幽霊に取りつかれて狂乱する男を中村翫右衛門が演じている。翫右衛門は歌舞伎役者だが、映画でも活躍し、戦前の名作「人情紙風船」などに出演していた。「茶碗の中」では、飄々とした演技ぶりがなかなかよい。

この映画の見どころは、筋書はともかく、映像美と音楽だろう。影像美ということでは、色彩の独得な美しさが印象的だ。また、音楽は武満徹が担当しているが、邦楽器を駆使した独特の音調が国際的な評価を集めた。「耳なし芳一」では、平家琵琶と並んで能楽の囃子も取り入れている。




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