壺齋散人の 映画探検
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白い巨塔:山本薩夫



山本薩夫の1966年の映画「白い巨塔」は、山崎豊子の同名の小説を映画化したもの。週刊誌連載中から大変な評判になったもので、山本の映画化に続いて、テレビでも放送され、映画のリメークも重なった。それほど反響の大きな小説だったわけだ。この小説には、続編もあるが、山本は本編連載終了後に映画化しており、続編の内容は盛り込まれていない。

テーマは、医学会における権力闘争と、医師の倫理というもの。この映画では、権力闘争に焦点が当てられ、倫理面については深入りしていないが、田宮二郎演じる財前五郎と田村高広演じる里見の対立を通じて、医学倫理とは何かについても考えさせるように作られている。

日本の組織には権力闘争は付き物であり、その闘争に打ち勝ったものが組織の要職を占めるようになっている。医学界も例外ではなく、大学医学部での教授等のポストをめぐる戦いとか、医師会内部でのポスト争いは熾烈を極めるようだ。民間会社なら、そうした権力闘争はあまり大きな副作用をもたらさず、せいぜい無能な輩が世渡りがうまいことだけで出世するくらいであるが、医学界の場合には、無能な人間より有能な人間に要職についてもらったほうが、患者のためにもなる。そういうわけで、医学界内部の権力闘争は、一般人にも無関心ではいられないところがある。この作品は、そうしたところに着目したおかげで、世間から大きな注目を集めたのだと思う。

映画のほうも、そうした俗世間的な興味を十分意識して作られている。テーマは、定年退官する教授のポストをめぐる争いなのだが、その争いの当事者たちが実に醜悪な工作合戦をする。現金や高価な品物で買収するのは序の口で、相手方を強迫したり、場合によっては邪魔者を消してしまおうとしたり、常識では考えられないようなことが行われる。それほど医学部の教授職というのは魅力に富んでいるということだろう。いまでもそうなのかはわからない。恐らく昔ほどひどくはなくなっているのであろう。医学界内のスキャンダルをほとんど聞かないことが、そういう傾向を裏付けているようだ。

この映画は、小説以上に注目を浴びて、主演の田宮二郎は一躍人気スターになった。この映画は、田宮の一人相撲といってよいほど、かれの存在感によって支えられている。たしかにこの映画の中の田宮は、すさまじい迫力を感じさせる。




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