壺齋散人の 映画探検
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上田慎一郎「カメラを止めるな!」:ゾンビ映画の傑作



上田慎一郎の「カメラを止めるな!」は、ゾンビ映画の傑作だとして内外で結構話題になった。ただのゾンビ映画ではなく、楽しめる工夫がなされている。その工夫がいかにも映画らしい工夫なので、話題性がいっそう高まったのだと思う。その工夫とはメタ映画ともいうべきもので、前半でゾンビコメディのフィルムを紹介しておいて、後半でそのフィルムができるまでのプロセスを公開するというものだ。

前半の筋書き自体は、ゾンビ映画によくあるもので、目新しいものではない。一組の男女が次々と不可解な体験をするのだが、それにかかわることになる登場人物たちがいきなりゾンビになるというものだ。目新しいといえば、そのストーリーが映画のためのものだということが当初からアナウンスされていて、実際映画監督とかスタッフとかが、俳優たちと一緒に画面に出て来ることだ。しかもその映画のスタッフは、後半の部分で、映画の本当の主人公をつとめることになるのである。したがって、映画作りという要素が、この映画の中では二重の形で示されるわけで、そこにこの映画が話題になった意外性が認められる。

話題になったわりには、そんなに面白いとは思えない。ゾンビ映画としては迫力に欠けるし、コメディとしても中途半端だ。唯一の長所と言えば、上述したような構成の意外性であるが、それもほかに誰もやったことのないことをやったというだけで、それ自体としてすごいわけではない。

酔いつぶれてゲロをはいたり、切迫した便意を催して野糞を垂れるシーンは、どういうつもりで入れたか知らぬが、なくもがなの下品なシーンだ。



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