壺齋散人の 映画探検
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川島雄三の世界:映画の鑑賞と批評


川島雄三は、日本映画に独自の足跡を残した。代表作からうかがわれる川島のユニークなところを一言でいうと、女のしたたかな生き方をスマートに描いたということだろう。川島雄三の描く女たちは、溝口の女たちとはまた違った輝きがある。溝口の女たちが、男に食い物にされながらけなげに生きているのに対して、川島の女たちは、逆に男を食いものにしてやろうという気概をもっている。そこに我々観客は時代の変遷を感じたりもするのだ。

川島雄三は戦後本格的な映画作りを開始し、当初はあたりさわりのない娯楽映画ばかりを作っていた。そのころの川島の作風は、人情喜劇といったもので、人情の機微をコメディタッチで軽快に描くといったものだった。肩の凝らないところが大衆受けに繋がったが、作品としての重みを感じさせるものはなかった。彼の人情喜劇の傑作としては、大阪を舞台にした「わが町」や「暖簾」があげられる。

川島雄三が映画監督としてブレイクするのは、1956年の作品「洲崎パラダイス」だ。これは東京の赤線地帯深川洲崎を舞台にしたもので、売春防止法施行直前の遊廓街のさまを描いている。洲崎に生きる遊女たちは、基本的には金に縛られて生きているわけだが、そんななかでも自分を見失わず、人間らしく生きようとする。そうした女たちの新しさを感じさせる生き方が、当時の観客には新鮮にうつったのであった。この映画を境にして、それまで主に男の意地を描いてきた川島は、女の生き方、それも自立した女の自主的な生き方に光をあてるようになった。

そうした自主的な女のイメージは、「女は二度生まれる」や「しとやかな獣」において、意識的に追求された。「女は二度生まれる」は、芸者家業の気楽さを逆手にとって、前向きに生きていこうとする女を描いたものだし、「しとやかな獣」は、色仕掛けで男をたぶらかそうとする女を描いている。こういったタイプの女たちは、従来の日本にはいなかったものだ。それを今日風に悪女といえよう。その悪女を若尾文子という稀有な女優が心憎く演じている。川島雄三は若尾文子を得たことで、新しい表現世界を切り開くことができたといえる。

一方で川島は、「幕末太陽伝」のような痛快な時代劇も手掛けている。これは「居残り佐平次」という落語をネタにとったものだが、その落ちにからめて、幕末の動乱をコミカルに描いている。川島雄三にはユーモアのセンスがあるのだが、それが程よく盛り込まれたスマートな作品といってよい。長生きしていたら色々と素晴らしい映画を作ったと思うのだが、惜しいことに45歳の若さで死んだ。ここではそんな川島雄三の代表的作品を鑑賞しながら、適宜批評を加えたい。


風船:川島雄三の映画

洲崎パラダイス赤信号:川島雄三


わが町:川島雄三の映画

幕末太陽伝:川島雄三

暖簾:川島雄三の映画

女は二度生れる:川島雄三

雁の寺:川島雄三

しとやかな獣:川島雄三



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