壺齋散人の 映画探検
HOMEブログ本館東京を描く英文学ブレイク詩集仏文学プロフィール掲示板



山田洋次の映画:作品の鑑賞と批評


山田洋次といえば、寅さんシリーズが定番で、年二本以上作り続けた。その合間に、日本人の生き方をテーマにした映画を作ったわけだが、そのいずれもが、我々日本人に、人間の生き方について強く考えさせるものがある。とりわけ、「男はつらいよ」シリーズは、東京の下町葛飾柴又出身の風来坊で、渥美清演じる瘋癲の寅を主人公に、日本人のいまでは忘れられた人情味あふれる生き方をテーマにして、実に五十作に及ぶシリーズとなった。

山田洋次は、寅さんシリーズを、原則年に二回(年末年始と夏のお盆)作り続ける一方、その合間に、やはり日本人の人情ある生き方をテーマにした独立作品をヒットさせた。とりわけ家族の強い絆を描いた「家族」とか、夫婦愛をテーマにしたロード・ムーヴィー「幸福の黄色いハンカチ」は、日本映画史に残るべき傑作である。

一方で、「たそがれ清兵衛」や「武士の一分」といった時代劇も作っている。「たそがれ清兵衛」は、中年男女の切ない恋を描いたものだが、そのかれらの恋情は我々現代の日本人にも強く訴えかけてくるものがある。小生などは「黄昏清兵衛」を日本映画の生んだ恋愛映画の最高傑作の一つだと思っている。

山田の映画には、寅さんを演じた渥美清とか、その妹さくらを演じた賠償千恵子をはじめ、常連というべき俳優がいる。無論、寅さんシリーズでマドンナ役を演じる大勢の女優をはじめ、じつに様々な俳優も出てくる。高倉健などは、それまではやくざ役のイメージが強かったものが、山田の映画に出ることで、人間味に深い味わいが加わり、一皮むけた印象を与えたものだ。とりわけ、「黄色いハンカチ」における中年男の悲哀を感じさせる演技は、高倉にとってもっとも満足できるものだったのではないか。

寅さんシリーズは、軽快なタッチのコメディであるが、山田は喜劇が得意で、寅さんシリーズ以前に、クレージーキャッツのハナ肇を起用した「馬鹿まるだし」のような作品も作っている。そのコメディ精神が、「下町の太陽」にすでに現れていた人情劇の精神と結びつくことで、寅さんシリーズに結実する山田洋次独特の世界が形成されていった。とにかく、山田洋次が長い間にわたって日本人の心をとらえてきたのは間違いなく、それは山田の醸し出す独特の日本的哀愁に、多くの日本人の心が共鳴したからだと思われる。

ここではそんな山田洋次の映画の中から、主要な作品を取り上げて鑑賞したい。まず、「男はつらいよ」シリーズを取り上げ、ついで単発作品を紹介する。


男はつらいよシリーズ

男はつらいよ:寅さんシリーズ第一作


続・男はつらいよ:寅さんシリーズ第二作

男はつらいよ望郷篇:寅さんシリーズ第五作

男はつらいよ純情篇:寅さんシリーズ第六作

男はつらいよ奮闘篇:寅さんシリーズ第七作

男はつらいよ寅次郎恋歌:寅さんシリーズ第八作

男はつらいよ柴又慕情:寅さんシリーズ第九作

男はつらいよ寅次郎夢枕:寅さんシリーズ第十作

男はつらいよ寅次郎忘れな草:寅さんシリーズ第十一作

男はつらいよ寅次郎子守唄:寅さんシリーズ第十四作

男はつらいよ寅次郎相合い傘:寅さんシリーズ第十五作

男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け:寅さんシリーズ第十七作

男はつらいよ寅次郎純情詩集:寅さんシリーズ第十八作

男はつらいよ寅次郎我が道をゆく:寅さんシリーズ第二十一作

男はつらいよ翔んでる寅次郎:寅さんシリーズ第二十三作

男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花:寅さんシリーズ第二十五作

男はつらいよ寅次郎かもめ歌:寅さんシリーズ第二十六作

男はつらいよ浪花の恋の寅次郎:寅さんシリーズ第二十七作

男はつらいよ寅次郎紙風船:寅さんシリーズ第二十八作

男はつらいよ寅次郎あじさいの恋:寅さんシリーズ第二十九作

男はつらいよ口笛を吹く寅次郎:寅さんシリーズ第三十二作

男はつらいよ寅次郎真実一路:寅さんシリーズ第三十四作

男はつらいよ柴又より愛をこめて:寅さんシリーズ第三十六作

男はつらいよ知床慕情:寅さんシリーズ第三十八作

男はつらいよ寅次郎物語:寅さんシリーズ第三十九作

男はつらいよ寅次郎サラダ記念日:寅さんシリーズ第四十作

男はつらいよぼくの伯父さん:寅さんシリーズ第四十二作

男はつらいよ寅次郎の休日:寅さんシリーズ第四十三作

男はつらいよ寅次郎の告白:寅さんシリーズ第四十四作

男はつらいよ寅次郎の青春:寅さんシリーズ第四十五作

男はつらいよ拝啓車寅次郎様:寅さんシリーズ第四十七作

男はつらいよ寅次郎紅の花:寅さんシリーズ第四十八作

男はつらいよお帰り寅さん:寅さんシリーズ第五十作


山田洋次「下町の太陽」:倍賞千恵子と青春群像

山田洋次「家族」:新天地をめざす家族の旅

山田洋次「故郷」:家族の絆

山田洋次「同胞」:時代遅れの農村啓蒙運動

山田洋次「幸福の黄色いハンカチ」:ロード・ムーヴィーの名作

山田洋次「遥かなる山の呼び声」:日本版シェーン

山田洋次「キネマの天地」:松竹大船撮影所の青春

山田洋次「息子」:父親の孤独

山田洋次「学校」:夜間中学校で学びなおす人々

山田洋次「たそがれ清兵衛」:日本恋愛映画の傑作

山田洋次「武士の一分」:男の嫉妬と対面

山田洋次「母べえ」:理不尽な暴力としての国家

山田洋次「おとうと」:姉弟愛と小さな愛

山田洋次「東京家族」:平成の「東京物語」

山田洋次「小さいおうち」:戦時中の日本人の生活

山田洋次「キネマの神様」 映画に青春をかけた男たち



HOME日本映画









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2016
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである