壺齋散人の 映画探検
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野村芳太郎の映画:代表作の鑑賞と解説


野村芳太郎は器用な人で、色々なジャンルの映画を作っている。なかでも得意なのは文芸作品の映画化で、とくに松本清張の推理小説を多く多く映画化している。「砂の器」や「鬼畜」はその代表的なものである。もっとも野村が映画界に存在感を示し始めるのはデビューしてからかなり経ってからのことで、それまではB級の娯楽映画ばかり作っていた。野村は非常に多作な映画監督で、生涯に80本以上の映画を作っているが、その大半は娯楽狙いの低品質映画である。

そんな野村芳太郎がブレイクしたのは、1958年に松本小説の小説「張り込み」を映画化してからのことだ。それ以来野村は、自己の節目ごとに松本清張の作品を映画化している。三年後の「ゼロの焦点」も清張作品の映画化だし、それから12年後の作品でかれの代表作となった「砂の器」も清張作品だ、そのほか、「わるいやつら」、「迷走地図」といった作品がある。

代表作の「砂の器」は、ハンセン病の患者をテーマにした清張の小説が原作だが、小説の持つ雰囲気を生かしながら、映像芸術としての映画の特色を最大限発揮しているもので、日本映画史上に残る傑作である。また同じく清張作品の「鬼畜」は、一時社会問題となった子捨てを、清張らしき感性を込めて描いた短編小説だが、それを野村は骨太な映画作品に仕上げている。これもまた傑作といってよい作品だ。

一方野村芳太郎は、「拝啓天皇陛下様」のような、社会的な視線を感じさせる問題作も作っている。だが、そうした作品は野村にとっては寄り道のようなもので、彼の本領は、娯楽性に富んだ文芸的な匂いの作品にあるといえよう。中でも「配達されない三通の手紙」などは、推理小説的な醍醐味を盛り込んだ娯楽色の強い作品で、彼の面目がもっともよく伺われるものだ。推理小説といえば、野村の趣味でもあり、いつも推理小説を読んでは、それを映画化できないものかと考えていたそうだ。

最晩年の野村芳太郎は、年間一本のゆったりしたペースで、腰を据えた映画作りをするようになった。「配達されない三通の手紙」以降、清張作品の「わるいやつら」、破傷風の恐ろしさを描いた「震える舌」などだ。「真夜中の招待状」はやや気の抜けた作品だったが、「疑惑」と「迷走地図」はやはり清張作品で、それなりに気合のこもった作品になった。こうしてみると、野村の作品で傑作とよばれるものの大部分が清張作品だとわかる。

ここではそんな野村芳太郎の代表作品をとりあげて鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


野村芳太郎「張込み」:松本清張の小説を映画化

野村芳太郎「ゼロの焦点」:松本清張作品の映画化

野村芳太郎「拝啓天皇陛下様」:戦友同士の友情

野村芳太郎「砂の器」:松本清張の小説を映画化

野村芳太郎「事件」:大岡昇平の小説を映画化


野村芳太郎「鬼畜」:松本清張の短編小説


野村芳太郎「配達されない三通の手紙」:エラリー・クィーンの小説


野村芳太郎「わるいやつら」:松本清張の映画化

野村芳太郎「震える舌」:破傷風の恐ろしさを描く

野村芳太郎「真夜中の招待状」:怪奇仕立てのサスペンス映画

野村芳太郎「疑惑」:死亡事件をめぐる裁判劇



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