壺齋散人の 映画探検
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黒沢清の映画「Seventh Code」:ヴラヂヴォストークの女諜報員



黒沢清の2014年公開の映画「Seventh Code」は、ミステリータッチの娯楽映画である。当時人気者だったアイドル歌手前田敦子のデモンストレーション作品のようなもので、映画としての出来はあまり考慮されていない。黒沢が、息抜きと資金稼ぎのために作ったようなものだ。

極東の町ヴラヂヴォストークを舞台に、女諜報員らしきものの活躍ぶりを描く。前田敦子演ずるその女は、当初はか弱い女として描かれているのだが、なにかをきっかけにして大化けし、男たちを相手に大太刀まわりを演じたあげくに、探していたはずの男を殺して、その褒美に大金を手にする。ところがその金を、街角のごみ箱にすてて、揚々と去っていくといった、荒唐無稽といってよいような内容の作品である。

それゆえ、観客は馬鹿にされているのではないかと思わせられもするが、前田敦子のファンにとっては、彼女の魅力を堪能できると思う。前田にはとぼけたところがあるらしく、映画の中でも、金がないのに何皿も料理を注文し、それらをうまそうに食いつくす場面がうつされる。その時の彼女の表情をみていると、人を小ばかにしたようなふてぶてしさを感じるのである。

スタート画面に、ロシア語で「クラーイポトリェーブソユース」と書かれた看板が写される。雑貨店といったような意味だ。だがその店は、映画の筋書きとは関係なく、映画は別の場所を舞台に展開していく。映画の前半では、前田敦子は日本からやってきた普通の女の子として描かれ、ラスト近くでスーパーウーマンに変身する。その変身ぶりがあまりにも突然なので、観客は面食らってしまうのである。



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