壺齋散人の 映画探検
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グルジアの映画:代表作品の解説と批評


グルジアは、旧ソ連圏諸国のなかで最も映画作りがさかんな国だ。それも質の高い映画を世に送り出している。グルジアは、スターリンやシュワルナーゼといったユニークな政治家を生み出してもおり、文化的な面でも、活発な国柄なのかもしれない。

グルジアの映画作家としてよく知られているのはオタール・イオセリアーニだ。かれは当初、グルジア人の生活ぶりを情緒豊かに描いていたが、そのうち、グルジアとヨーロッパを行きつ戻りつし、ヨーロッパ人をテーマにした映画も作るようになった。すべての作品というわけではないが、ファンタスティックな雰囲気を感じさせるものが多い。

逆に政治的な作品もある。グルジアは、アブハジア及びオセチアとの間の民族紛争を抱えており、その対立をテーマにした映画が作られた。代表的な作品としては、「とうもろこしの島」や「みかんの丘」がある。また、その民族問題の延長上に、ロシアとの戦争も起こった。2008年の八月に起きたロシア・グルジア戦争である。これはロシアの圧倒的な勝利に終わった。この戦争をテーマにした作品として「キリングフィールド極限戦線」がある。

戦後、ロシアはアブハジアとオセチアをそれぞれ独立国家として承認するいっぽう、ロシアに敵意を強めたグルジアは、ソ連の後継組織としての独立国家共同体から離脱した。

グルジア人は、ロシア人がよほど憎いらしく、国名を変える動きを見せたほどだ。伝統的な国名であるグルジアはロシア語を想起させるというので、英語でジョージアと呼んでほしいと世界中に訴えた。日本もその訴えに耳をかし、いまではジョージアを正式名称として採用している。日本もロシアとの間に領土問題をかかえ、反ロ感情が結構つよいのである。もっともグルジア映画を見ていると、グルジーアとかグルジンスキーという言葉が頻出するので、ふつうのグルジア人は、まだグルジアということばに慣れ親しんでいるようである。

そのほかユニークな映画も作られている。「懺悔」は20世紀中につくられた作品だが、スターリン体制下のディストピアを批判したものだ。スターリンはグルジアの生んだ英雄の一人のはずだが、あまりにもソ連の匂いがしみ込んでいるので、グルジア人はスターリンを好きになれないようである。また、「葡萄畑に帰ろう」は難民迫害を描いたものだ。グルジアは難民問題とはなかなか結びつかないこともあり、したがって切迫感が伝わってこず、いまひとつ迫力不足を否めない。

「ダンサーそしてわたしたちは踊った」は、男性同士の同性愛を描いたものだが、LGBTQはいまや世界共通の問題なので、それなりの意欲を感じることができる。

以上グルジア映画は結構多彩である。ここではそんなグルジア映画の代表的な作品を取り上げて、鑑賞のうえ適宜解説・批評を加えたい。


オタール・イオセリアーニ「素敵な歌と舟はゆく」:グルジア人から見たフランス

オタール・イオセリアーニ「月曜日に乾杯!」:グルジア的なフランス


オタール・イオセリアーニ「汽車はふたたび故郷へ」:夢の乗り物

オタール・イオセリアーニ「皆さま、ごきげんよう」:年代記のフランス

グルジア映画「とうもろこしの島」:グルジアのアブハズ人

グルジア映画「みかんの丘」:アブハジア紛争を描く

グルジア映画「キリングフィールド極限戦線」:ロシア・グルジア戦争の一齣

グルジア映画「懺悔」:ディストピアとしてのグルジア

グルジア映画「ダンサー そして私たちは踊った」:男性の同性愛

グルジア映画「葡萄畑に帰ろう」:難民迫害を描く



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