壺齋散人の 映画探検
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フェルナンド・トルエバ「ベル・エポック」:共和制時代のスペイン



ベル・エポックといえば、普通は、19世紀末から20世紀初めにかけて、フランスに花開いた文化の香り豊かな時代を指して言う。スペインでは違う意味で使われているらしい。フェルナンド・トルエバの1992年の映画「ベル・エポック(Belle Époque)」は、1930年代のスペインに一時的に実現した共和制の時代を描いている。その時代が一部のスペイン人にとってはベル・エポックつまり「善き時代」だったと言いたいようである。

とはいっても、深刻なテーマの映画ではない。スペイン人が好きなセックス・コメディである。この映画に出て来る男女は、共和主義の問題よりはセックスのほうがはるかに重大問題だというかのごとく、セックスを謳歌するのである。

一人の若者が王朝派の軍隊を脱走して共和派の老人と仲良くなる。その老人には四人の娘がいて、そろって実家に戻って来る。若者はハンサムとあって、娘たちに好意を持たれる。そればかりかセックスの相手をさせられるのである。

まず二女のビオレタからモーションをかけられる。彼女は軽度の性同一障害で、自分を男と思うところがあるのだが、どういうわけか若者に性的興奮を覚え、セックスの相手をさせるのだ。無論体位は女上位である。

ついで三女のロシーオにセックスの相手をさせられる。ロシーオにはフィアンセがいるのだが、これがひどいマザコンで、彼女をがっかりさせる。がっかりした彼女が若者に補償セックスをせまるというわけなのだ。

長女のクララも若者に性的関心を寄せる。彼女は夫を水難事故で失ったばかりで、欲求不満の状態にあるのだ。その欲求を若者相手に晴らすというわけである。

末娘のルースも若者に恋心を抱いているが、なかなかそれを言い出せないでいる。そのうち彼女らの母親が家にもどってくる。彼女はサルスエラの歌手で、世界中を公演して飛び回っているのだ。彼女には旅先の無聊を慰めてくれる愛人がいるのだが、自分の家では夫と一緒に寝るのである。

そんな母親が、ルースの恋心を知る。そこで長女のクララと協力しあって彼女の恋を成就させてやることにする。その恋には他の姉たちも異存はないのだ。そういうわけで、最後はルースと若者が結ばれ、アメリカへ旅立つこととなる。アメリカで心機一転二人だけの生活を築こうというのである。母親は再び公演の旅に出発し、ほかの娘たちもそれぞれの生活拠点にもどっていく。一人父親だけが、田舎の広大な屋敷に取り残されるのである。



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