壺齋散人の 映画探検
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ジュビリー:デレク・ジャーマン



デレク・ジャーマンは、いまではイギリス映画を代表する監督の一人に数えられている。みずから同性愛者であることを公表し、エイズにかかって52歳で死んだ。かれの作品には、同性愛を謳歌するようなところがあり、そのため男色映画というレッテルを貼られることもあった。

1977年の映画「ジュビリー」は、彼の第三作目だが、ここでも同性愛を公然と描いている。その描き方は、男同士は裸で抱き合い、むき出しにした尻やペニスを観客に披露する一方、女同士の同性愛は、控え目に表現される。その同性愛の世界を描くことが、この映画の主な目的だと思うのだが、どういうわけかジャーマンは、歴史上の人物エリザベス女王を、その同性愛の世界への案内者に起用している。

映画はそのエリザベス女王が、側近に天使を呼ぶように命じ、呼び出された天使アリエルが女王を未来の世界に案内するという構成をとっている。未来の世界とは、おそらく20世紀のイギリスなのだろう。ロンドンらしい町並みを舞台に、ウオール・ストリートという言葉も出てくることから、なんとなくそんなふうに思われる。

だがエリザベス女王は、そのままの姿で未来にワープするわけではなく、ボドという女に変身して、不良女たちの群れの中に投じる。その群れのなかで、彼女はアネゴ格を演じ、かたわら若い男たちを両腕に抱いたりする。この映画の中の彼女は、ヘテロセクシャルとして描かれているのである。

彼女がワープした世界は、ある種のディストピアということになっている。芸術は死んだが芸術家は生き残り、セックスは老人がすることとされている。セックスと言うのは、どうやら男女の性交と言う意味であり、同性愛の行為は盛んなようなのだ。その証拠に、この映画では、ゲイの性行為の場面があちこちで出て来る。

この国では、天国は悪魔が行くところであり、キリストはゲイの救済者である。実際、ゲイたちが踊る狂う所に、キリストは降臨するのだ。一方、隣国への入り口には「鎌と鎚」をあしらった旗が掲げられ、「黒人、ホモ、ユダヤ人は立ち入り禁止」と書かれている。ホモにとっては、この国にいるほか選択の余地はないということらしい。

しかしそのホモにとって、この国は安全なところではなく、町では機動隊によるホモ狩りが行われている。機動隊は「スペシャル・ブランチ」と名乗り、大きなオートバイを飛ばしながら、ホモを見つけ次第殺害しているのだ。そのホモ狩りに、ボドが抱いていた若者たちもひっかかり、殺されてしまう。ボドの女仲間たちは、その復讐をしてやる。若者を殺した機動隊員を、なぐって殺したり、火炎瓶で焼き殺したりするのだ。

こんな具合にこの映画は、同性愛と暴力がテーマのように見える。権力を感じさせる要素もある。その権力は、国家ではなく、私人であるギャングによって体現されている。いまやこの国は、ギャングが支配しているようなのだ。そのギャングを、どういうわけか、日本人の本田圭佑に似ているイギリス人が演じている。




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