壺齋散人の 映画探検
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イギリス映画の世界:名作の鑑賞と解説


イギリス映画は、英語圏のアメリカ映画の興隆のかげで、ほかのヨーロッパ先進国に比較すると、映画産業がなかなか盛んにならなかった。1930年代にアルフレッド・ヒッチコックのような優れた映画監督を生んだが、ヒッチコックは早い時期にハリウッドに活動舞台を移した。だから、第二次大戦以前には、世界に誇るような名作映画はほとんど生まれていない。

イギリス映画が、世界的な水準に肩を並べるのは、第二次大戦後である。デヴィッド・リーンとキャロル・リードという二人の映画監督が、戦後のイギリス映画をリードした。リーンの「逢引」は映画史上もっとも優れた恋愛映画であるし、リードの「第三の男」は世界的な大ヒットになった。この映画で流れたチターの調べはいまでも映画由来のスタンダード・ナンバーである。

1960年代には、007シリーズが世界的なヒットを記録するなど、イギリス映画は堅調さを示したが、1970年代に入ると低調になった。これはイギリスに限らず、世界的な傾向であったが、イギリスの場合には、映画産業の低調ぶりがひときわめだった。1981年にはわずか24本しか作られていない。

だが、1980年代半ば以降復活をとげ、制作本数も増加し、すぐれた作品も作られるようになった。1980年代を代表する映画監督はデレク・ジャーマンである。かれは自身ゲイであることを隠さず、映画のなかにホモセクシャルな表現を持ちこんだことで世界を騒がせた。

21世紀に入ると、イギリスはいわゆるサッチャリズムの結果格差社会になり、さまざまな社会問題が表面化した。そうした時勢を反映して、21世紀のイギリス映画には、社会的視線を強く感じさせる作品が多い。そういう中で、社会派の巨匠と認められるようになったのがケン・ローチである。ローチは、美しい映像と情緒的な画面作りを通じて、世界の映画ファンをうならせた。

イギリスは、シェイクスピアを産んだ国ということもあり、シェイクスピア作品の映画化が盛んである。ローレンス・オリヴィエという希代の演劇人が、シェイクスピア作品を進んで映画化している。また、オーソン・ウェルズはじめ、アメリカの映画監督も、シェイクスピア作品を数多く映画化している。

ここではそんなイギリス映画から、名作といわれる作品をとりあげ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


デヴィッド・リーン

デヴィッド・リーン「逢いびき」:世界映画史上最高の恋愛映画

デヴィッド・リーン「オリヴァー・ツイスト」:ディケンズの小説を映画化

デヴィッド・リーン「超音ジェット機」:イギリスのジェット機開発

デヴィッド・リーン「旅情」:アメリカ女の旅の恥のかきすて

デヴィッド・リーン「戦場にかける橋」:日本軍によるイギリス軍兵士の虐待

デヴィッド・リーン「アラビアのロレンス」:トルコからのアラブの独立運動

デヴィッド・リーン「ドクトル・ジバゴ」:パステルナークの小説を映画化

デヴィッド・リーン「ライアンの娘」:アイルランド人女性の奔放な生き方

デヴィッド・リーン「インドへの道」:イギリスによるインド支配


キャロル・リード

キャロル・リード「邪魔者は殺せ」:アイルランド紛争の一こま

キャロル・リード「落ちた偶像」 少年の勘違い

キャロル・リード「第三の男」:映画史上に残る傑作

キャロル・リード「二つの世界の男」 冷戦下のベルリン

キャロル・リード「空中ブランコ」 男女の繊細な三角関係

キャロル・リード「華麗なる激情」:ミケランジェロの半生

キャロル・リード「オリバー」:ディケンズ作品のミュージカル化

キャロル・リード「フォロー・ミー」:大人の洒落た恋愛


デレク・ジャーマン

デレク・ジャーマン「ジュビリー」:エリザベス一世の同性愛礼賛

デレク・ジャーマン「テンペスト」:シェイクスピア劇を裸で演じる


デレク・ジャーマン「カラヴァッジオ」:画家の同性愛

デレク・ジャーマン「ラスト・オブ・イングランド」:死と破壊

デレク・ジャーマン「ウォー・レクイエム」:死者のためのミサ曲

デレク・ジャーマン「ザ・ガーデン」:同性愛者の受難

デレク・ジャーマン「エドワード二世」:イギリス史上最も劣悪な王

デレク・ジャーマン「ウィトゲンシュタイン」:プラトニックな同性愛

デレク・ジャーマンんの遺作「BLUE」:映像のない映画


ケン・ローチ

ケン・ローチ「ケス」:少年とハヤブサの触れ合いを描く

ケン・ローチ「大地と自由」:スペイン内戦の一齣を描く


ケン・ローチ「ブレッド&ローズ」:アメリカの労働問題を描く

ケン・ローチ「Sweet Sixteen」:児童の貧困問題を描く

ケン・ローチ「麦の穂をゆらす風」:内戦で引き裂かれる兄弟

ケン・ローチ「この自由な世界で」:外国人労働の搾取

ケン・ローチ「エリックを探して」:サッカー選手から生きる勇気をもらう男

ケン・ローチ「ルート・アイリッシュ」:イラク戦争の一齣

ケン・ローチ「天使の分け前」:反社会分子の社会包摂

ケン・ローチ「ジミー 野を駆ける伝説」:アイルランド人の分断

ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」:イギリスの貧困

ケン・ローチ「家族を想うとき」:貧困による家族解体の危機


シェイクスピア劇

イギリス映画「リチャード二世」 シェイクスピア劇の映画化 Hollow Crown シリーズ

ヘンリー四世第一部 Hollow Crown シリーズ第二作

ヘンリー四世第二部 Hollow Crown シリーズ第三作

ヘンリー五世 Hollow Crown シリーズ第四作

ヘンリー六世 Hollow Crown シリーズ第五作

ヘンリー六世第二部 Hollow Crown シリーズ第六作

リチャード三世:嘆きの王冠 Hollow Crownシリーズ第七作

ヘンリー五世:ローレンス・オリヴィエのシェイクスピア映画

お気に召すまま:シェイクスピア劇の映画化

じゃじゃ馬ならし:シェイクスピアの喜劇

真夏の夜の夢:シェイクスピア劇の映画化

イギリス映画「恋の骨折り損」 シェイクスピア劇のミュージカル化

ロメオとジュリエット:シェイクスピア劇の映画化

ジュリアス・シーザー:シェイクスピア劇の映画化

ハムレット:ローレンス・オリヴィエのシェイクスピア映画

オセロ( Othello ):オーソン・ウェルズのシェイクスピア映画

リア王:シェイクスピア劇の映画化

マクベス( Macbeth ):オーソン・ウェルズのシェイクスピア映画

ケネス・プラナー「シェイクスピアの庭」 最晩年のシェイクスピア

イギリス映画「オフィーリア」 ハムレットをオフィーリアの視点から描く


イギリス映画補遺

イギリス映画「冬のライオン」 王権をめぐる対立・抗争

イギリス映画「英国王のスピーチ ジョージ六世の伝記

イギリス映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」

イギリス映画「魔笛」 モーツァルト・オペラの映画化

イギリス映画「ミッション」:スペイン、ポルトガルの植民政策を批判

マイク・リー「ヴェラ・ドレイク」:堕胎の罪を問われる

ジョー・ライト「アンナ・カレーニナ」:トルストイの小説を映画化

マイク・リー「秘密と嘘」:現代イギリス人の家族関係

イギリス映画「おじいさんと草原の小学校」:ケニア現代史を描く

ジム・ローチ「オレンジと太陽」:英豪政府の人身売買を描く

静かなる 情熱エミリー・ディキンソン:テレンス・デイヴィス

ウィズネイルと僕:ブルース・ロビンソン

エリザベス:エリザベス一世の若いころを描く

ぼくの国、パパの国 イギリスのパキスタン人コミュニティ

リチャード・エア「アイリス」:認知症を描く

イギリス映画「ハイドリヒを撃て!ナチの野獣暗殺作戦」:チェコの対独レジスタンス

イギリス映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

イギリス映画「日の名残り」 執事の眼から見た世界の動き

イギリス映画「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロの小説を映画化

イギリス映画「アナザーワールド鏡の国のアリス」 ルイス・キャロルのファンタジー

イギリス映画「アメイジング・グレイス」 奴隷貿易の廃止にとりくんだ政治家

オペレーションズ・ミンスミートーナチを欺いた死体


マイケル・コリンズ:アイルランド内戦を描く

マグダレンの祈り:カトリックの女性更生施設を描く

アイルランド映画「メアリーの総て」 フランケンシュタインはどのように書かれたか 

ケネス・プラナー「ベルファスト」 北アイルランド紛争を描く



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