壺齋散人の 映画探検
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アンナ・カレーニナ:ジョー・ライト




「アンナ・カレーニナ」は、トルストイの最高傑作であるのみならず、近代小説の手本とも言われた。たびたび映画化されている。イギリス人監督ジョー・ライトが2012年に作った作品は七作目ということだ。凝った演出で話題になった。画面のシーンを演劇の舞台のように見せる工夫がなされているので、観客はスクリーンに映し出された舞台を見せられているような気持になれる。

原作を読んだのは半世紀も前のことなので、詳しいことは忘れてしまった。ただアンナ・カレーニナが不倫の恋をして、生まれた子を夫のカレーニンに引き取ってもらい、自分は投身自殺をするというような筋書きを漠然と覚えている。その当時は、アンナの不倫がよく理解できなかったが、年をかさねて見直すと、彼女の気持ちがわかるようになった。女ざかりの年で、恋をしたいと思うのは、人間としてあたりまえのことなのだと思うようになったからだ。

映画は、主要な場面を舞台仕立てにして、その合間に自然のなかのロケ撮影をはさんでいる。たとえばアンナがヴロンスキーとセックスする場面だ。裸のアンナがヴロンスキーの腹の上に乗り腰を激しく振るところなどは、欲望に突き動かされる女の表情がよく出ている。そういうシーンを見せられると、人間というものは、上半身よりも下半身に左右される生き物だと、つくづく感じ入る次第だ。

イギリス映画だから言葉は英語だ。だが背景にはロシアらしい光景をさしはさみ、看板にはキリル文字を写したりしている。もっとも一方では、英語のアルファベットも使っているので、おそらく、風景として見えるものにはキリル文字を使い、情報として見えるものにはローマ字を使うという仕分けになっているのだろう。

アレクセイ・カレーニンが好人物として描かれている。なにしろ妻が不倫で生んだ子を、自分の子として引き取るのだ。彼が好人物なだけ、アンナは自分勝手なエゴイストとして映る。原作もそんな雰囲気なのか。おそらくそうなのだろう。




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