壺齋散人の 映画探検 |
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ジョゼフ・L・マンキウィッツはポーランド系のユダヤ人である。映画作りではあまり思想性を出すことはなかったが、なぜか保守派から目の仇にされ、いわゆるマッカーシズムの嵐のなかで、レッド・パージされそうになったこともある。監督協会会長になったときに、人種差別主義者のセシル・B・デミルから攻撃され、ジョン・フォードに擁護されたというエピソードは有名である。 1949年の映画「三人の妻への手紙(A Letter to Three Wives)」は、純粋な娯楽映画といってよいが、アメリカ人夫婦のあり方を、多少ちゃかしたようなところもある。あるいはそういうところが、アメリカ的価値観を大事にする連中から嫌われたということは考えられる。 筋書はいたって単純だ。夫婦生活に倦怠期を迎えた三人の妻に、一人の女から手紙が届く。差出人は一人で、宛書は連名というかわった手紙だ。それには、差出人が今日、三人の妻たちの一人の夫と駆け落ちすると書いてあった。 三人とも、もしかしたら自分の亭主がその駆け落ち相手ではないかと疑う。そこで思い当たるふしを探ろうとして、過去を回想する。その回想のなかで、三組の夫婦のあり方があぶりだされてくるといった具合に作られている。 結局その芝居は、他の女ではなく、三人の亭主のうちのひとりが仕組んだとわかる。この亭主は、日頃仲よく付き合っている三組の夫婦が、それぞれ倦怠期の危機を迎えていることについて、芝居を仕組んでゆさぶり、それぞれの絆を考えさせようと仕向けたわけである。 他愛ないと言っては他愛ないが、健康な夫婦関係を重視するアメリカ文化ならではの、夫婦愛についてのこだわりを感じさせる映画である。 なお、これは余談だが、小生は「三人の妻への手紙」という表題を、一人の男が自分の三人の妻にあてた手紙というふうに受け取ったのだったが、よく考えると、同時に三人の妻を持てるわけは、いくらアメリカでもないと思うので、なぜそんな勘違いをしたのか、いまだにわからないでいる。 |
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