壺齋散人の 映画探検
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ジョゼフ・L・マンキーウィッツ「イヴの総て」:ベティ・デヴィスの代表作



ベティ・デヴィスはアメリカ映画史上最高の女優の一人だと言われる。独特の風貌と妖艶な雰囲気が強烈なインパクトをもって迫って来る。小生が彼女を映画で見たのは、ウィリアム・ワイラー監督の「黒蘭の女」が最初だったが、それ以来すっかり彼女にのぼせ上ってしまい、是非こんな女を愛人にしたいと、未成年にして思ったものだ。

ジョゼフ・L・マンキーウィッツの1950年の映画「イヴの総て(All About Eve)」は、そんなベティ・デヴィスの代表作といわれる作品だ。この時彼女は40歳を超えた熟年女優となっており、年齢による衰えよりは、むしろ年齢がかもしだす貫禄のようなものを感じさせる。まさか未成年の男子があこがれの対象とするわけにはまいらぬだろうが、中年男をいかせるには十分な魅力を発揮している。

テーマは、自力でスターに這い上がろうとする若い女の生き方だ。アメリカは実力社会を標榜していることもあり、男女を問わず貧しい境遇から這い上がった成功物語が受ける。この映画は、女優を目指す女の成功物語で、その点では「スター誕生」などと同趣旨のものである。

成功を夢見る若い女イヴをアン・バクスターが、円熟した中年舞台女優マーゴをベティ・デヴィスが演じている。一応クレジット上はベティが主演だが、アカデミー賞向けには共同主演という形をとった。二人ともノミネートされたのだが、どちらも受賞を逃した。映画会社が欲張りすぎたためだと言われている。

アン・バクスターは、虫も殺さぬ顔をしながら、悪女さながらに振る舞う。その彼女をベティのほうは、先輩女優として最初は快く受け入れるのだが、自分が利用されていることを知ると、怒りを爆発させる。しかし頭の作りではかなわないので、ついには出し抜かれてしまう。映画は、バクスター演じるイヴが晴の舞台で名誉ある賞を受賞する姿を、ベティが苦々しく見つめることろから始まり、彼女らの過去が回想されるという形で進んでいく。イヴの総てをお見せしようという具合に。

怒りを爆発させるシーンが、この映画の中でのベティがもっとも輝いて見えるところ。彼女は芯の強い女性らしく、自分の意志を前面に出して、自己主張するところがもっとも輝いて見える。若い頃の「黒蘭の女」にもそういうところは見られた。未成年の小生が彼女にのぼせたのは、そういう自立した女にあこがれたためだろう。

マリリン・モンローが、やはり成功を目指す女として登場する。彼女は、成功したイヴの部屋に押しかけて来て、かつてイヴがマーゴ相手に行ったことを、イヴ相手に行うのである。そんなわけで、この映画の中のマリリンは、セックス・アピールをしているわけではない。



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