壺齋散人の 映画探検
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スティーヴン・スピルバーグ:宇宙人と人間の友情



1977年公開のアメリカ映画「未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind)」は、UFOをテーマにしたSFファンタジー映画である。地球のあちこちに出没するUFOに、人類が接近を試み、ついに両者が遭遇して意思疎通に成功するプロセスを描いている。ふつうこの種の物語は、とかく宇宙人と地球との戦いという様相を帯びがちだが、この映画にはそういう要素はない。UFOの宇宙人は地球人に対して友好的であるし、地球人のほうでもUFOを友人として受け入れる。そこがスティーヴン・スピルバーグらしいところと言えよう。

プロット展開がやや不明瞭なのは、隠れた主役というべきUFOが言葉を話せないことに由来しているのだろう。映画のほとんどは、謎の物体に直面した地球の人々が右往左往したり、あるいは子どもがそれに魅せられるところを描いているのだが、彼らの行動の動機が不明なままゆえに、なぜそうなるのか、見ている方にはいまひとつ腑に落ちないところが残るのだ。もしUFOが言葉を話したら、動機が明らかになるだけわかりやすくはなるが、かえって映画の面白さは減ってしまうだろう。

UFOが地球のあちこちに現れることから映画は始まる。そのうち、アメリカのある場所に現れたUFOに、一人の少年と家族持ちのある男が遭遇して、UFOの虜になる。少年のほうはそのあまりに、UFOによってさらわれてしまう。また男のほうは、UFOにとらわれるあまり気が変になってしまう。そのあげくに妻子に逃げられてしまう有様だ。

しかし物語は、この二人とは離れたところで進行する。どうやらアメリカ政府の息のかかった組織が、UFOと接近するプロジェクトを展開し、それにUFOが応えるという具合に話が進む。その両者の接近・交流の現場に、UFOにとらわれた男と少年の母親が居合わせるのである。

その挙げ句、さらわれていた少年がUFOによって返されるかわりに、男のほうはUFOに招かれて宇宙へと旅立つ。このUFOに乗ると、地上の時間からは自由になって、男は老いるこがなくなるだろうというメッセージが流れてくるという具合になっている。

そんなわけで、ややとりとめのない話だが、UFOがテーマだと割り切れば、それなりに面白く見ることができるのではないか。なお、この映画にでてくる宇宙人は、頭でっかちで細長い手足を持った、たこのようなイメージに描かれている。宇宙人イコールたこのイメージは、欧米人にはなじみのあるもののようだ。

原題のClose Encounters of the Third Kindは、第三種接近計画とも訳すべきもので、人間と宇宙人との交流プログラムをアポロ計画のようなものとしてイメージしたものだろう。



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